過去ログ - 阿良々木暦「あんずアント」
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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/25(日) 13:22:53.59 ID:dxcDzJ6y0

世界は理不尽に満ちている――そんな退廃的な議論をしたい訳じゃない。

だけれど、誰かが頂点を得る以上は、その過程で蹴落とされるものは多分に存在する。
それは、友人だったり、家庭だったり、人生そのものだったり。
どんなジャンルにおいてもトップを目指すということは、博打に近い。
そこまでしたって栄華を掴めるのはごく一部の人間だ。
そして彼等は、決して何もせずに登り詰めた筈がない。

「普段は怠けたいのに好きな時にアイドルやりたいなんて、印税で楽に暮らしたいなんて、虫が良すぎるんじゃねえか、双葉杏」

「…………」

僕の綺麗すぎる正論にぐうの音も出ないのか、俯いて黙り込む双葉。

だけどな、双葉。
僕が言いたいのはそんな事じゃないんだよ。

「僕はな……誰よりも輝ける才能を持っておいて、その才能に凭れかかりのお前が気に食わないんだよ!」

心渡を構え走り出す。
説教はこれで終わり。
後は双葉自身の問題だ。

双葉は逃げ出すかと思いきや、その場に留まり僕を睨みつけていた。

「……わかったよ、プロデューサー」

「さっき言ったよな、トップアイドルになりたいって。怪異のせいだとしても、あれがお前の本音なら――」

あの一言さえ無ければ、僕は本当にお前を見捨てていたかも知れない。

けれど僕とお前はあくまで対等なんだ。
双葉が不純であろうと僕に大きく輝く夢を預けてくれると言うのなら。

「杏もがんばる! だから杏に夢の印税生活を見せてよ!」

双葉の小さな身体を撫で斬る。
その小さな身体に燻った想いを断ち切るかのように、刃は怪異だけを切り捨てた。

「ああ、一緒に行こう。トップアイドルになるために」

その場に倒れ込む双葉を抱え、僕は少しだけ双葉の心中を覗けた気がしたのだった。



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