110: ◆tcMEv3/XvI[saga]
2014/06/22(日) 16:10:12.27 ID:2Cxtq59so
#4−11#
勝者の去った戦場で、隆起した壁で作られた床――ややこしいが、とにかくそういう場所なのだ――に男2人が座り込む。
アルコールランプを囲んでの作戦会議だ。
軍曹「お前の顔は……まぁ女が好みそうな顔だが……なぜアリシアがお前の操を狙っているのかが理解できん」
ダニエル「あぁ。だが僕はあんな女知らないぞ。単に一目ぼれじゃないか? それより……」
軍曹「プリンセスたちと合流すべき、か?」
ダニエル「そうだ。場所が分からないとはいえ、あの少年少女との合流が先決だ」
軍曹「……ここで待つのが安全だと思うが。この地下水路の構造を良く知っているのはプリンセスとあの少年、つまりプリンセスの弟だけだ」
ダニエル「確かに……だが、探してみる価値というのは……」
軍曹「ないな。敵が何人かも分からないんだ。だったら、この『分断トラップ』で天井が崩落した地点に留まるべき。じゃなきゃ迷子だ」
ダニエル「ああ。そうだな……」
軍曹「で、童貞なのか? そんな感じはしていたが」
ダニエル「……」
――そんなに僕はそう見えるのか。
ダニエルは少女に「童貞臭い」と言われたことを思い出す。
沈黙が、淀んだ水路を流れる。
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倉庫内は、蛍光灯がついていて明るかった。
神父「『もし汝の兄弟、罪を犯さば、これを戒めよ。もし悔改めなば之をゆるせ』(新約聖書―ルカ伝17章3節)」
少年「……『悪いことしたけど謝るから許して下さい?』 先程の殺害予告。僕が許すとでも?」
神父は穏やかに笑みを浮かべた。
神父「『罪人』とは、貴方のことです」
少年、これに激昂し神父に飛びかかろうと足を進める――。
――足が、動かない。
少年、足元に強烈な『摩擦』を感じ、転ぶ寸前で踏みとどまる。
このまま走っていたら、この『摩擦』にやられて転んでいただろう。
少年、直感する。
少年「『特定空間内の大気圧を操る能力』……遊び過ぎたな、神父」
気圧とは、空間中にかかる気体による圧力のことである。
海面上の気圧を1気圧。真空状態で0気圧となる。
低地で暮らす場合、約1気圧で生活していることになるが、1気圧下でかかる圧力は「水の場合10m分の圧力」に相当する。
我々地球上の生物は重力に屈し、このように理不尽な圧力に適応して進化してきたのだ。
さて、少年の推察通り、神父の能力が『特定空間内の気圧を操る能力』だったと仮定して――。
次項より解説させて頂こう。
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