過去ログ - やはり雪ノ下雪乃にはかなわない第二部(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている )
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951:黒猫 ◆7XSzFA40w.[saga]
2015/07/23(木) 05:18:38.05 ID:G6XbfMQl0

第57章



 だから俺は無防備な本心を彼女に差し出す。

謝罪とか誠意なんていう相手を思いでやってのことではない。ただ俺がそうしたいだけだ。

これこそ自己満足の欺瞞だと言われるかもしれないが、他の選択肢は選択肢としてさえ

あげなかった。きっと落ち着いて考えれば無難な方法だって見つかるはずだ。

そう、葉山隼人だったら陽乃さんを傷つけずに、そしてうまく場を収めてしまうだろう。

でも、俺はそれをよしとはしない。自分に嘘をつきたくないなんて無駄なかっこうをつけたい

わけでもない。ただたんに、陽乃さんに俺の気持ちを聞いてもらいたかった。それだけだった。

俺は陽乃さんの願いをかなえる事は出来ない。それを叶えてしまったら、雪乃を悲しませてしまう。

 それに陽乃さんも願いはするが、叶ってほしいとは思ってはいないはずだ。

だって、重度のシスコンの陽乃さんが雪乃を泣かすなんて事はしない。

 涙が必要なら、自分だけが流して終わりにしてしまうだろう。

 そんな思いやりがある人だから、そんな不器用な人だから、

俺は自分を作った言葉を見せたりはしたくはなかった。

八幡「だったらこう呼んでもいいですか?」

 俺の問いかけに、陽乃さんは手もとのグラスに固定させたままの視線を動かさない。

強張った体が縮こまり、小さく目てしまう体をさらに小さく見せてしまった。

 沈黙のみを伝えてくるその体に、俺は聞いているか不安になって顔を覗きこむ。

 すると、目元からこぼれ出た涙だけが陽乃さんの感情を吐露していた。

八幡「陽乃っ…………、」

 うわっ。かんじった。つーか、かんだっていうか、また「陽乃姉さん」っていいそうに

なっちまった。なんでシリアスモードで「陽乃さん」って声にだせないかな?

 これが俺の限界っていわれても納得はする。でも、今回だけは勘弁してくれよって叫びたい。

 つーか、この陽乃姉さん騒動も俺が言いだした事ではあるけど、

面白がってのってきたのは陽乃さんなんだよなぁ……。

とはいうものの、陽乃さん自身さえその名のうちにひそむ毒には気が付けなかったわけで。

 と、愚痴っててもしゃーないから、早いうちに言いなおしておくか。

八幡「すんません。ちょっとかんでしまって、リテイクでいい……、え?」

 うん。

 「え?」が正しい。これ以外の表現はないって断言できる。幾万の言葉を費やしても、

俺の心情は表せないと断言できる。

だって、俺の目の前には、ぽけ〜っと瞳をうるませて俺を見つめる陽乃さんがいるんですもの。

しかも、頬を朱に染め上げ、手にするワインの表面は小さく波打っちゃってるじゃないですか。

 こ・れ・み・た・こ・と・が・あ・る・よ。は・ち・ま・ん。

 雪乃が照れまくって、デレまくって、うっとりしているときの表情にそっくりだ。

さすが姉妹。知りたくもなかったけど、母君様が親父さんにデレるときも同じである。

誰も知りたくもない誰得?情報でした。うん、この情報知ったのが母君様に知れたら、

もれなく社会生活から抹殺されるっていう特典付きだよ、きっと。俺の命が助かっているのも、

身内になる可能性があるからだけであり、そうでなければきっと死んでいたと思うし。

もしくは自決していた。

 ほんと、知りたくはなかったけど。知った時の衝撃は、今でも厳重封印したままでである。



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