過去ログ - やはり雪ノ下雪乃にはかなわない第二部(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている )
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969:黒猫 ◆7XSzFA40w.[saga]
2015/07/30(木) 17:18:10.91 ID:QZCHccKj0

八幡「なあ、だったら雪ノ下家の陽乃ではなくて、ただの陽乃さんは見たことあるか?」

雪乃「ただの? 素の姉さんってことかしら?」

八幡「ああ、そんなところだと思う。母親に求められる雪ノ下陽乃でも、友人たちに
   求められる雪ノ下陽乃でもない。陽乃さんの心の奥底に隠しているであろう
   誰の理想でもない陽乃ってところだな」

雪乃「そう…………その定義であれば、見た事はないわ」

八幡「そうか。ならいい」

雪乃「八幡はなにか思うところがあったのかしら?」

八幡「べつにそういうわけではないんだけどよ。なんというか、素の陽乃さんだけでは
   なくて、素の比企谷八幡。素の雪ノ下雪乃ってなんなんだろうなって思ってさ」

雪乃「だったら、素の私ってどういう風なのかしら? 八幡から見た印象で構わないわ」

 期待に満ちた瞳が俺に向けられ、肩にかかった黒髪を払う姿さえもわざとらしい仕草に
思えてしまう。俺を挑発するようで実は緊張しているのが今となってはよくわかる。
 高校時代の俺ならば、馬鹿にしている態度として受け取っていたはずだ。
しかし、雪ノ下雪乃は強くはない。俺も、そして由比ヶ浜も雪乃は強いとずっと思っていた。
 いつだって前を見て、いつだって一人でやり遂げて、その為に必要な能力を有している
俺の憧れでもあった。けれどそれは俺の理想であり、いわば雪乃に俺の理想を
押し付けていたにすぎないと、ある時俺は気がついた。
 別に俺の印象の中の雪乃なのだから、どんな印象を持っても俺の自由だ。
 だけどそれは同時に、雪乃に俺の理想を押し付けてしまい、馬鹿な俺は雪乃に理想を
演じる事を求めてしまう。もちろん雪乃には関係ないところの出来事なのだから、
俺の理想通りには進まない。だから俺は理想からはずれた雪乃を見て勝手に幻滅する。
 つまりなんていうか、俺は陽乃さんが本当に理想の雪ノ下陽乃を演じられていたのかと
疑問に思えてしまっている。
 いつだって期待にこたえてきたとはいうが、本当に陽乃さんは自分が出した結果に満足
してきたのだろうか。一応周りの連中は陽乃さんが叩きだした結果に満足して誉めたたえて
きたようである。しかしそれがイコール陽乃さんの中の理想と一致するとは限らない。
となると、もし陽乃さんが理想の雪ノ下陽乃を演じられていないとしたら、もし自分に幻滅
してたとしたら、それは俺の陽乃さんへの認識が大きく間違っている事を意味してしまう。
 それも、考えたくもない結末も伴って。

八幡「あらためて問われるとわからないものだな。逆に雪乃自身ではどう捉えているんだよ?」

雪乃「自分で自分の素の姿なんてわかるわけないじゃない。八幡が見ている私が雪ノ下雪乃
   であり、それと同時に由比ヶ浜さんが見ている雪ノ下雪乃も雪ノ下雪乃であるのでは
   ないかしら。同じ人物であっても人によっては印象が違うでしょうから、
   素の自分なんて考えても答えは出てはこないわ」

八幡「なるほどな」

雪乃「……なら、比企谷八幡から見た雪ノ下陽乃はどうみえるのかしら?」

 勢いで問いかけてはみたが、答えを知りたくはないと拒絶する瞳に、
俺は心を読まれている気がした。
雪乃は本当に俺の瞳を通して陽乃さんを見たいのだろうか? 見てどうしたのだろうか?
 俺でも陽乃さんをどう見ているかなんてわからないというのに。
でも、俺でさえ曖昧で答えが見つからない答えを、
雪乃は探り当ててしまっているような気さえしてしまう。
そんな人外れた才能に、陽乃さんと雪乃は姉妹なんだと、今さらながら認識してしまう。

八幡「…………すまん、わからない」

 絞り出した声は、言葉になっているか怪しかった。



第58章 終劇
第59章に続く




第58章 あとがき

新スレを建てましたが、このスレも最後までしっかり使っていこうと思います。
新スレに入っても、よろしくお願い致します。
来週も、木曜日、いつもの時間帯にアップできると思いますので
また読んでくださると大変嬉しく思います。

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