過去ログ - 教師「お前は一体どうしたいんだ!」 少女「私は……」
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277:名無しNIPPER[saga]
2015/03/25(水) 05:30:05.29 ID:vm/rZ9XB0
先生の家が私の住所と近いことを知ったのはほんとうに偶然だった。
中学校に入学してすぐ、先生がここで買い物をしているのを見かけたのだ。

当時の私は先生のことを何も知らなかったから、厄介なことになったな、と思った。
人は私を見ると、何かと接点を持ちたがる。話しかけることもできないくせに、変に付きまとってくるのだった。わざと視界の中に入ってきたり、ちらちらとこちらを窺ったり。

そういうとき、彼らはきまって薄ら笑いを浮かべている。
彼らが私に何を期待しているのかは手に取るようにわかった。それが私には奇妙で奇怪で、――気持ち悪い。

この人もそうなるのだろうと、ため息を吐いたものだ。

少女(それが、まさかあんな顔をなさるなんて……)

買い物を済ませてスーパーマーケットを出る。買い物袋を片手に持った傘がくるくると回った。

あの時先生は、決まり悪そうな顔をしたのだ。一瞬驚いた表情をして、私の抱えていた買い物かごと自分のものを見比べて。
先生の買い物かごはカップ麺とインスタント食品ばかりだったから。

それがあまりにも予想外で、平々凡々とした反応だったから、私は面食らってしまった。
先生は「夕飯の買い物か。えらいな」と口早に言って、気をつけて帰るように言い残してそそくさと帰ってしまった。

小さくなる先生の後ろ姿に、私は呆れてしまった。学校では威厳すら漂わせているのに、情けないやらなにやらで台無しだ。

きっとその時から、私の胸には小さな明かりが灯っている。

私はアパートの一室の前で立ち止まる。チャイムを二度鳴らし、ポケットから取り出した合鍵で玄関のドアを開ける。
お邪魔します、と呼びかけると、応える声があった。

「……いらっしゃい、というのは少し違うかな」

でも他に言いようがないしなあ、と先生は苦笑いするように、顔をしかめて微笑った。



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