過去ログ - 渋谷凛「シンデレラ前夜」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2014/06/17(火) 23:00:59.37 ID:dsaafw6kO
「凛ってさあ、人生楽しい?」

「…何、急に」

「だってさ、凛って全然笑わないじゃん?かといってすっごく腹立てたりキレたりもしないしさあ」

「はぁ…」

「それって人間としてどうなのって。なんか感情が死んでるんじゃないかなって思う訳で」

「もっとオブラートに包んで言えなかったの?」

「生憎持ち合わせが無くてねー。それでも気になるなと思ってさ。どうなの?」

「…考えたこと無いな。私は私だし、それなりに感情もあると思って今まで生きてきたから」


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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:02:24.93 ID:bpx7at7DO
「そっか、それならそれでいいんだけどさあ。
でも、なんかこう、凛が笑顔になったところとか見てみたいな」

「ニコッ」

以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:02:58.22 ID:bpx7at7DO
「凛ってさ、スタイルもいいし綺麗だし、思い切ってアイドルとか目指してみたら?」

「なんでアイドル?」

「そう、今は偶然絶後のアイドルブームでしょ?きっと凛ならいい所までイケるんじゃないかな」
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:03:47.19 ID:bpx7at7DO
「あんなの素質があって、魔法使いがいて、素敵な舞台が用意されていて、
それで初めてシンデレラになるんだよ」

「素質はあると思うだけどなー。
ま、凛が今のままでいいって言うならそれもいいのかもしれないけど、
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:04:23.60 ID:bpx7at7DO
渋谷の街を歩けば至る所に今を時めく765プロの女の子たちの広告。

彼女たちの歌声がイヤホンから流れ出す。

ふと目線を上げると、大型ビジョンに彼女たちの躍動する姿が映し出される。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:05:30.42 ID:bpx7at7DO
渋谷の街も様変わりしたように思う。

ほんの少し前はもう少し歩きやすい雰囲気だったのに、
今はアイドルプロダクションのスカウトマンが色々な女子に声を掛け、
女の子も誰かに声を掛けられようと着飾り、
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:06:13.59 ID:bpx7at7DO
私もきっと何かに必死になって向き合っていればそんなことは思わなかったと思う。
でも私にはそんな風に必死になれるものが無い。

人生が楽しく無さそうと思われたのは、
自分が熱量を傾けられるものが無いからそう思われてしまったのだろう。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:07:13.17 ID:bpx7at7DO
季節は春。全てが華やかに色づき、何もかもキラキラしている
そんな季節なのに、私の目に映る世界は灰色に染まっていく。

イヤホンから流れる彼女たちの鮮やかな歌声と灰色に見える世界が、
私をどうしようもない日常の泥沼に引き込んでいく。そんな感覚に襲われる。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:08:05.39 ID:bpx7at7DO
冬に比べればだいぶ日も長くなってきて、
今日はいつもより暖かいから、ふらつくにはいい日。

イヤホンをしているといいことが一つある。
渋谷は声を掛けてくる人が多いから、気付いていないふりをしてやり過ごすことが出来る。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:08:55.52 ID:bpx7at7DO
渋谷についてから数時間は過ぎただろうか。
なんでこんな街でふらふらしているんだろうかと考えると、
とても無意味な時間を過ごしていることに気付く。

時間を潰すためだけに私は今ここにいて、こうしてふらふらしているのだろうか。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:09:49.00 ID:bpx7at7DO
私は私を分からないままに、こうして時間を浪費する。

でも、もううんざり。楽しくなんかない。いつもいつもそう思う。

でもそんな退屈な日常から、私は逃げることが来ない。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:10:28.94 ID:bpx7at7DO
こうして今日が終わり、また明日になり、明日が終わっていく。
それでいいんだと割り切るのに、一体どれぐらいの時間がかかるのだろう。
そしてそんな風に思える日は果たして来るのだろうか。


以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:11:09.33 ID:bpx7at7DO
目を向けると、物凄い勢いでえずいている。

「…っ、はっ…はぁ…ぉぇ…ハァ……」

「えっ…だ、大丈夫ですか?」
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:11:51.46 ID:bpx7at7DO
「はぁ…、そ…んか…、あ、オェ…ぬね…」

「…はぁ」

このまま放置するわけにもいかないし、すぐ横に自動販売機もある。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:12:30.90 ID:bpx7at7DO
ワイシャツ姿の男性は何度か深くうなずいてから私のペットボトルを受け取る。

呼吸を一つ二つと置いて、ペットボトルのスポーツ飲料水を勢いよく飲み…いや、吸い込んだ。

ペットボトルがベコン、ベコンと凹み、あっという間に500ミリのペットボトルは空になる。
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:13:18.74 ID:bpx7at7DO
「別にいいよ。たまたまぶつかった縁ってことで。じゃあ私はこれで」

「いや、たまたまじゃない。君を探してたんだ」

「…は?」
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:14:03.41 ID:bpx7at7DO
「もう一人の女の子に声かけて聞こうと思ったんだけど、
人が多くて右往左往しているうちに見失っちゃって。
それでもうひたすらに渋谷の街を大激走。
君みたいな女の子が好きそうなショップとかを、走り回って確認しては走るを繰り返してたよ」

以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:14:59.86 ID:bpx7at7DO
でも次の言葉はもう聞き飽きている。アイドルにならないか、だ。
この街や他の街でも、スカウトに来る人はみんなそう。
私はそんなものに興味ない。


以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:16:10.05 ID:bpx7at7DO
「歩く道はいくらでもある。選び放題だ。
でも歩ける道はいつも自分が選んだ目の前の道だけ。
俺は君に一つ、今とは違う道があることを提示する」

「…違う道」
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:17:23.09 ID:bpx7at7DO
「でも渋谷さんを綺麗に着飾らせたり、舞台を用意したり、そんな魔法はかけてあげられる。
そんなものが無くても輝けるようなアイドルになれるかは、渋谷さん次第だけど」


きっと夕日のせいだ。私の灰色の世界の中で、
以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/06/17(火) 23:18:51.66 ID:bpx7at7DO
そう言って、ズボンのポケットから数時間ぶりに出されたであろう名刺入れを取り出し、
その中身を手渡された。比喩でもなんでもなく名刺から熱さが伝わった。

この熱さは、私に対して向けられたと言っても過言ではないのかなと、
そんなことを思って少し可笑しくなった。
以下略



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