過去ログ - モバP「怪談をしよう」
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/20(金) 23:13:44.11 ID:e5IvpnBoo
P「じゃあ次の話するか。山は話したから海の話だ。
 話を一つ。盆の海の話。

お盆の海に近づいてはいけないってのは一回ぐらい聞いた事はあると思う。霊は水場に集まるって言う
しな。盆という時期柄引き込まれるというイメージがついたのかもしれない。もしかしたら盆にはクラゲが
出てきて危ないから近づくなって意味だったりしてな。だけど確実にそれだけではないんだ。

ある少年が遠い親戚の葬儀に参加するため、海沿いの地方の家まで行った。季節は夏。不謹慎ではある
がまさか海へ旅行に行けるとは思ってなかったので内心ウキウキしていた。着いてみると眼前には人気
のない綺麗な砂浜と海が広がっている。すぐにでも泳ぎたいと思っていたのだが母親に
「葬式の間は入ってはいけない」
と予め釘を刺されていたので我慢することにした。

家には既に何人もの親戚が集まっていた。両親に連れられて挨拶周りをする。最後に今回亡くなった人
の写真の前で手を合わせた。写真が置いてある台は豪華でもなんでもなくとりあえず家にあった丁度い
い台に乗せただけみたいな感じで隣には大きな四角い箱が置いてあるだけだった。
「覚えてないだろうけどあんたここに十年前に来てて、会ったことある人なんだよ」
母親にそう言われて改めて写真を見る。太った中年くらいのアロハシャツの似合いそうなおじさんが笑って
いる。うっすらと頭を撫でられたような記憶があるがあまりはっきりとはしない。

葬式は明日身内だけでやるので今日は自由にしていいと母親が言うので試しに海で泳いでいいか聞いた
ら知らない親戚のおじさんに
「いいか。葬式が終わるまでは絶対に入ったらだめだぞ。なに、明日には終わるから明後日体が焦げる
 ほど遊べばいいさ」
と言われ、頭をぐしゃぐしゃされた。なんでだめなのか尋ねたが教えてもらえなかったのでその日は親
戚のおじさんに遊んでもらった。

翌日、葬式が始まった。
お坊さんを呼んで、みんなで座っているものかと思っていたがそういうのではなく、写真のある部屋で
昼間から宴会をするというものだった。途中で昨日仲良くなったおじさんになんでこんな楽しげな葬式
なのか聞くと、昔からここの家系ではそういう葬式をしているのだという。亡くなった人が寂しくないように
憂いを残さないように笑って騒いで送り出すそうだ。

やがて陽が暮れて、夜になっても葬式は続いた。九時ぐらいになるとさすがにみんな疲れてきたのか静
かになった。起きている人が部屋に布団を敷いていく。昨日はみんな別々の部屋に寝たのに今日はみん
な同じ部屋で寝るようだ。酔い潰れている人がいるからだろうかと納得した。大部屋のために全員が寝る
のにも十分な広さはある。しかしなぜか故人の写真と箱を部屋の外に運んでいく。母親に尋ねても答えて
くれない。さらに部屋の襖をきっちり閉めて目張りまでする。一箇所だけ家の奥へと入る襖には目張りを
せずに、トイレ用と書かれた張り紙が張ってあった。さすがに異様な雰囲気を感じたがなんとなく聞けず、母親に
「トイレに行く時は必ず私を起こしていきなさい。一人で言っちゃだめ」
と言われ寝かしつけられた。

しかしこんな異様な雰囲気ではさすがに寝付けず、両親を起こさないように寝返りをうっていると外か
から何かを引きずるような音が聞こえた。さらにびちゃびちゃと水の音もする。音は襖と廊下を挟んだ
すぐ外、さきほど写真と箱を運んだほうから聞こえてきた。その時、なぜそう思ったかわからないがトイレ
に行こうと思い、母の言い付けも無視して、一人で襖を開けてトイレに向かった。トイレまでの道は一直線
で他の場所は全て寝ていた部屋と同じように目張りされている。中に入ったものの別に出る物はなく、
なんとなく顔を上げたら目張りされた小窓があることに気付いた。この小窓からなら外が覗ける。そう思い
何の躊躇いもなく目張りを外し、小窓を開けた。つっかえがあるようで少ししか開かなかったが外から生臭い
臭いが漂ってきた。どうにか先ほどの音の正体を調べようと角度を変えながら覗くと音のした庭が見えてきた。


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