過去ログ - P「律子の淹れるコーヒーはすげー苦い」
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21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:08:00.99 ID:7b2UHG2Go
 慌てて事務所を出た。律子が出て行ってから、時間はそんなに経ってない。
濡れて滑りやすい階段に冷や汗をかきながら、俺は雨の中に走り出た。

 すぐに雨が髪を濡らす。ばしゃばしゃと皮膚を打つ以外の雨は、
服に吸い込まれ重く、その下に冷たく手を伸ばした。
以下略



22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:08:49.31 ID:7b2UHG2Go
 待てよ。俺の声は雨音に消えるくらいに弱弱しかった。

 全力で走って、ようやく律子の腕を捕まえた。
しばらくの間、息が上がってしまって言葉が出なかった。

以下略



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:09:58.75 ID:7b2UHG2Go
 律子は苦々しく顔を歪めた。俺に掴まれた腕が痛いのか、雨が冷たいのか、それとも別のなにか。

 律子が口を開けると、ラジオノイズのような雨音がひたりと途切れた気がした。

「あなたに使ってほしかった」
以下略



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:10:42.82 ID:7b2UHG2Go
「……私、行きますから」

 律子はいつもの仏頂面を取り戻した。自分の二の腕の辺りを軽く揉んで、鼻をふんと鳴らした。
 頭蓋の下で、火花が散ったような気がした。

以下略



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:11:14.27 ID:7b2UHG2Go
 律子がその波打つ水面に表情を浮かべてしまう前に、俺はその場を走り去った。

 爆発寸前の心臓とざらざらの一対の肺を抱いて、雨を走った。
 事務所に着く頃には頭は冷えていた。


26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:12:01.03 ID:7b2UHG2Go
 事務所の灯りを消し忘れたままで出てきてしまった。鍵をかけるのも忘れていた。
誰も入った様子はなく、ひとまずほっとする。

 ガスの元栓と戸締りの確認をする。
振り返ると身体から伝い落ちた足跡が、床を濡らしていた。
以下略



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:13:45.46 ID:7b2UHG2Go
 律子は傘を拾ったのだろうか。

 備え付けのタオルで髪と顔を拭きながら考えた。
結局、律子も俺も雨に濡れて、傘は開かないまま二人の間を行ったり来たりしただけだ。

以下略



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:14:23.55 ID:7b2UHG2Go
 ――――

 翌日、律子は休んだ。

「風邪だそうです。プロデューサーには申し訳ない、と伝えてくださいって」
以下略



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:16:17.52 ID:7b2UHG2Go
 強がりだと思った。俺が電話を真っ先に取っていたら、
あるいは律子が俺に直接電話をしてきたら、本当にそう言えただろうか。

 ずっと前、同じように風邪をひいたとき、律子は俺の携帯に電話をした。
そのとき俺は、気にするなと気負わず言えた。
以下略



30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:18:16.00 ID:7b2UHG2Go
「ええっ、律子さん、お休みなんですか?」

 ソファーで三人固まって雑誌を読んでいた中の一人が訊いた。
三人ともどこかそわそわとした様子だ。

以下略



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