過去ログ - P「律子の淹れるコーヒーはすげー苦い」
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2014/06/23(月) 10:19:18.26 ID:7b2UHG2Go
ああ、と思い出した。
そういえば、去年も一昨年も律子の誕生日を忘れなかった。
忘れたのは、きっと、忙しくなったからだと無意識に言い訳する。
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2014/06/23(月) 10:20:22.09 ID:7b2UHG2Go
「律子さん、きっと喜びますよ」
声の調子で察したのか、小鳥さんはどこか心配そうに言った。
そうだといいんですけど。呟いて、パソコンの電源を入れた。
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2014/06/23(月) 10:21:32.88 ID:7b2UHG2Go
明日、アイツは二十歳になる。
もう子供じゃない。俺が口を出せる歳じゃなくなる。
思わず溜息が抜ける。
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2014/06/23(月) 10:22:12.86 ID:7b2UHG2Go
「プレゼントあげたら、喜ぶと思いますよ?」
「そうですかね」
「まだ用意してないんでしょう? 今からでも買ったらいかがです」
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2014/06/23(月) 10:22:41.20 ID:7b2UHG2Go
「また、前みたいに仲良くできますよ」
小鳥さんは俺のマグカップをデスクから拾って、コーヒーのおかわりを淹れに行った。
少し、濃く淹れてください。給湯室に向かって言うと、はあい、と返事が聞こえた。
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2014/06/23(月) 10:23:27.88 ID:7b2UHG2Go
「今日はどうもすみませんでした」
それで、なにかご用ですか。なんてトゲが続きそうな言い方だったが、風邪のせいかそれで終わりだった。
「ああ、いや、まあ」
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2014/06/23(月) 10:24:53.62 ID:7b2UHG2Go
「なあ、律子」
「なんです」
「昨日は、傘……悪かった」
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2014/06/23(月) 10:25:39.44 ID:7b2UHG2Go
俺は携帯電話をポケットに入れて、少し遠回りの道を歩いた。靴に雨が染み始めた。
ふと、律子へのプレゼントに時計を買おうと思い立った。ちょっと高い腕時計を。
俺と律子の間の空洞を、秒針が細かく切り刻んでくれればいい。
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2014/06/23(月) 10:26:39.95 ID:7b2UHG2Go
三つ目のショーケースの前で、俺は立ち止まった。
落書きのような値札の数字はあまり見ないように、並んだ腕時計の金属の質感を想像する。
「お探し物ですか」
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2014/06/23(月) 10:27:23.15 ID:7b2UHG2Go
「こちらはいかがです」
彼は俺の目に留まっていた時計を拾い上げて見せた。
銀と白を基調にしたシンプルな文字盤がしゃれている。
全体的に小振りなデザインで、律子の細い手首に良く似合いそうだった。
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2014/06/23(月) 10:28:35.71 ID:7b2UHG2Go
「いいんですけど、ね。もう少し見ようかと」
見ようかと、と言ったところで彼の言う通り他の時計はあまりピンとこない。
ぐるぐる見回しても、結局彼の手にある銀の時計に目が留まる。
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