過去ログ - P「律子の淹れるコーヒーはすげー苦い」
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24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:10:42.82 ID:7b2UHG2Go
「……私、行きますから」

 律子はいつもの仏頂面を取り戻した。自分の二の腕の辺りを軽く揉んで、鼻をふんと鳴らした。
 頭蓋の下で、火花が散ったような気がした。

以下略



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:11:14.27 ID:7b2UHG2Go
 律子がその波打つ水面に表情を浮かべてしまう前に、俺はその場を走り去った。

 爆発寸前の心臓とざらざらの一対の肺を抱いて、雨を走った。
 事務所に着く頃には頭は冷えていた。


26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:12:01.03 ID:7b2UHG2Go
 事務所の灯りを消し忘れたままで出てきてしまった。鍵をかけるのも忘れていた。
誰も入った様子はなく、ひとまずほっとする。

 ガスの元栓と戸締りの確認をする。
振り返ると身体から伝い落ちた足跡が、床を濡らしていた。
以下略



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:13:45.46 ID:7b2UHG2Go
 律子は傘を拾ったのだろうか。

 備え付けのタオルで髪と顔を拭きながら考えた。
結局、律子も俺も雨に濡れて、傘は開かないまま二人の間を行ったり来たりしただけだ。

以下略



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:14:23.55 ID:7b2UHG2Go
 ――――

 翌日、律子は休んだ。

「風邪だそうです。プロデューサーには申し訳ない、と伝えてくださいって」
以下略



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:16:17.52 ID:7b2UHG2Go
 強がりだと思った。俺が電話を真っ先に取っていたら、
あるいは律子が俺に直接電話をしてきたら、本当にそう言えただろうか。

 ずっと前、同じように風邪をひいたとき、律子は俺の携帯に電話をした。
そのとき俺は、気にするなと気負わず言えた。
以下略



30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:18:16.00 ID:7b2UHG2Go
「ええっ、律子さん、お休みなんですか?」

 ソファーで三人固まって雑誌を読んでいた中の一人が訊いた。
三人ともどこかそわそわとした様子だ。

以下略



31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:19:18.26 ID:7b2UHG2Go
 ああ、と思い出した。

 そういえば、去年も一昨年も律子の誕生日を忘れなかった。
忘れたのは、きっと、忙しくなったからだと無意識に言い訳する。

以下略



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:20:22.09 ID:7b2UHG2Go
「律子さん、きっと喜びますよ」

 声の調子で察したのか、小鳥さんはどこか心配そうに言った。

 そうだといいんですけど。呟いて、パソコンの電源を入れた。
以下略



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:21:32.88 ID:7b2UHG2Go
 明日、アイツは二十歳になる。

 もう子供じゃない。俺が口を出せる歳じゃなくなる。
 思わず溜息が抜ける。

以下略



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:22:12.86 ID:7b2UHG2Go
「プレゼントあげたら、喜ぶと思いますよ?」

「そうですかね」

「まだ用意してないんでしょう? 今からでも買ったらいかがです」
以下略



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