47: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:03:56.26 ID:xpCfEu5V0
健太は太郎の母と一緒に部屋で待っていた。
どうせ使うのだからと、部屋の真ん中には小さなテーブルが出されている。
その上には冷えた麦茶が置かれ、
48: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:04:35.08 ID:xpCfEu5V0
入口の脇にあるベッド。
その枕元に、黒い表紙がチラリと頭を覗かせていた。
49: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:06:17.33 ID:xpCfEu5V0
まず第一。『本は一冊ではなかった』。これは動かぬ事実である。
太郎の電話を受けた時、思えば数までは言われなかった。
単に言う暇が無かったのだと思われるが、
50: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:07:01.31 ID:xpCfEu5V0
そして第二。『太郎の母はまだ気が付いてない』。
ベッドは入口の脇にあり、入る時は死角になる。
そして太郎の母は麦茶を持ってきた後、一度もこの部屋からは出ていない。
51: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:07:37.26 ID:xpCfEu5V0
健太は以上の結論を2秒で叩き出すと、
新兵の行進よろしく、ぎこちない歩みで太郎の部屋を後にした。
『第三の存在』を否定する事は出来ないが、
52: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:08:21.82 ID:xpCfEu5V0
健太が玄関まで出迎えた時、そこに居たのは太郎ではなかった。
鈴木だ。
太郎が土手で腐っていた時、鈴木は太郎を追い抜いてしまったのだ。
53: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:09:12.07 ID:xpCfEu5V0
「しかし遅いな。俺の方が早く着くとは思ってなかったんだが……」
その言葉に太郎の母が表情を曇らせた。
「まさか事故にでも……」
54: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:09:53.92 ID:xpCfEu5V0
さらに15分が経った。
「まさか逃げたんじゃないだろうな?」
鈴木が腕時計を睨んでぼやく。
55: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:10:44.66 ID:xpCfEu5V0
階下から玄関を開ける音がした。今度こそ太郎に違いない。
健太は「ちょっと行ってきます」と二人に会釈し、すぐさま部屋から出ていった。
玄関に下りたその時、健太は友の姿に目を疑った。
56: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:11:20.15 ID:xpCfEu5V0
「すまない、僕の注意が足りないばかりに……」
健太は頭を垂れながら、背中から桃色の雑誌を取り出した。
太郎の身に何が起こったかは聞かなかった。
57: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 19:12:05.04 ID:xpCfEu5V0
太郎はカバンに雑誌を仕舞いながら健太に聞いた。
「ベッドのヤツか?」
健太は小さく首を縦に振る。
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