過去ログ - 総合P「過労死必死」
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171: ◆7SHIicilOU[saga]
2014/07/03(木) 09:26:21.45 ID:vZ/OG/0co

「お前も知っているだろう。私が人をスカウトするときは感覚頼りだった」
「……うむ。貴様のその才能だけは認めてやる」
「――もうそれもなくなってしまったのさ、彼と出会ってから」

 彼を見つけたとき、それは大きな衝撃が私を襲った。
多くのアイドル。輝くステージ。傍に居る彼。
その映像が鮮明に脳裏に映った。――そしてその感覚は正しかった。が。

「あれほどの才能と出会い、スカウトしたことで私の運も目も
 全て消費しきってしまったのだろう。私とてその後悪あがきで幾人か声をかけたが……」

 瞬く間にやめて行った。そして私は自分の老いに否応なくぶつかった。

「貴様……それでも『親』か?」

 自嘲する私を侮蔑するように黒井は言った。

「親?」
「社長とは、会社の親だ。そして社員は子だ。
 子の時は甘い物しか好まんが、年を重ねる毎に苦みも辛さも好ましく思えるようになる」
「にがみも、からさも」
「くるしみも、つらさも、だ」

 会話をしながら既に三杯目になったグラスを空にしてテーブルに叩きつける。

「そういうものだろう……高木」

 最後の黒井の台詞は。

「あまり私を失望させるな」

 不思議と、初めて聞くように聞こえて。
それが黒井らしからぬ『優しさ』なのだと気づいたのは幾分立ってからだった。

「……私は」

 呟き、いつの間にか注がれたグラスの中身を飲み干す。

「マスター。今日は帰らせてもらう……いくらかね?」

 勢いつける為、わざとらしく立ち上がってマスターを見ると柔和な笑みを浮かべていた。

「いえ、結構です」
「そういう訳には――」
「既にいただいてますので」

 言われて、先刻まで黒井が居た席を見れば……。

「あいつめ……格好つけよって……」

 私にはまだまだ、やることがあるようだ。


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