170: ◆7SHIicilOU[saga]
2014/07/03(木) 09:25:49.30 ID:vZ/OG/0co
「私の力ではないよ。……全て彼のおかげさ」
私はなにもしていない。否、できなかった。
自分でスカウトしてきたにも関わらず、その彼のあり余る才能から逃げだしただけだ。
「私ができることは万が一の時、責任を取る事だけだ」
本来なら社長という席は彼に与えても構わなかった。
ただ、せめて。なにかあった際。責任を取ってやめる。
一度限りのスケープゴートでも役割が欲しかったのかもしれない。
「彼は私には荷が過ぎて、苦すぎた」
カンと、空になったグラスの音。
「だから、その才能ある男を使い潰すつもりか?
あのままでは数年と持たずあの男は死ぬぞ。
貴様は人事権を持つ社長としてやる事がまだあるだろう、
以前あの男と話したが、なんだあの状況は」
苛立たしげな口調。黒井らしい、聞きなれた物の筈が、なぜか無性に痛かった。
「それは私にはもうできないんだよ黒井」
「……どういう事だ?」
空になったグラスを回し、ロックアイスを揺らしながら私は呟く。
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