32: ◆rNqPl/b1mU[saga]
2014/07/09(水) 21:39:32.39 ID:XwwQtEVw0
キリト「お前……誰だ?」
同時に、全く同じ言葉が、目の前の男の口から流れた。
クライン「おい……誰だよおめぇ」
辺りがざわつきだしたのに気づき、思わず周囲を見回す。
すると、広場に集まる人の群れが、数十秒前までのいかにもファンタジーゲームのキャラクターめいた美男美女のそれではなくなっていた。
まるで、現実のゲームショーの会場からひしめく客を掻き集めたかのようなリアルな若者の集団が、そこにあったのだ。
なんと、恐ろしいことに、男女比すら大きく変化している。
キリト「一体……何がどうなってるんだ?」
俺の疑問に、横尾はすぐさま答えてくれた。
横尾『ナーヴギアは、高密度の信号素子で頭から顔全面を完全に覆っている。つまり、脳だけではなく、顔の表面の形も精細に把握している。諸君が初めてナーヴギアを装着した時のセットアップステージで、≪キャリブレーション≫というものを行ったはずだ。キャリブレーションとは、《手をどれだけ動かしたら自分の体に触れるか》の基準値を測る作業だ。自分の体の部位を隅々まで触ることで、装着者の体表面感覚を再現し、自分のリアルな体格をナーヴギア内部にデータ化することが可能なのだ』
クライン「そ、それってつまり……」
キリト「……つまり、今ここにいる全てのプレイヤー達が、ゼロから造ったアバターから現実の姿へと変化している。体の質感はポリゴンのままだし、細部には多少の違和感が残るけども……確かに凄い再現度だ」
クライン「……ってことは、まさか……」
俺と、俺の目の前の男はもう一度、お互いに顔を向き合った。
クライン「お前……おめぇがキリトか!?」
キリト「ああ。その通りだよ、クライン」
現実――。
あの男――横尾太郎は、さっきそう言った。
このポリゴンのアバターと、数値化されたヒットポイントは、両方本物の体であり、命なんだと。
それを強制的にプレイヤーに認識させるため、横尾は俺達の現実そのままの顔と体を再現したということだ。
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