過去ログ - 阿良々木暦「かなこエレファント」
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25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/09(水) 19:07:57.99 ID:HorbTFBDO

逃げるように通話ボタンを押す。

「はいっもしもし!」

『プ、プロデューサーさんですか!?』

声の主は昼間会ったばかりの三村だった。
その声色は焦燥に満ちているように聞こえる。

「どうしたんだ、こんな時間に」

『あのっ、その、うまく言えないんですけど、大変なことにっ!』

「落ち着けよ、何があったんだ?」

『とにかく来てください! わ、私もうどうしたらいいか……!』

三村は他人を気遣えない女の子でもなければ、非常識な人間でもない。
少なくとも直に日付が変わろうとしている時間帯に、ふざけて人を呼びつけるようなことはしないだろう。

ということは、それ相応の何かがあったのだ。

「わかった、事務所にいるんだな? すぐに行くから、大人しくしていろよ」

『は、はい!』

通話ボタンを押して立ち上がり、パンツと紳士肌着の状態からカッターシャツを羽織る。

「仕事?」

「いや、今日は完全にオフにしたから違うんだけれど……」

「ひょっとして、三村さん?」

「……なんでわかったんだ?」

「昼、彼女と握手した時にちょっと、ね。懐かしい雰囲気がしたから」

「懐かしい……?」

「蟹に、そっくりだったのよ」

おもし蟹。
かつて家庭の不和により蟹と行き遭ったひたぎ、想いと共に重さを奪われた。

心がざわつく。

それは、確信に近い予感だった。

「……悪い、ひたぎ。折角来てくれたのに。すぐ、戻るから」

「いいのよ。私に出来ることはあるかしら?」

「ここで、待っていてくれ」

「行ってらっしゃい」

ひたぎに見送られながら、僕はアパートを後にしたのだった。



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