過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」
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113:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/21(月) 23:37:09.62 ID:r4w0sd270
 マサラタウン、レッド旅立ちの日。レッドは自室で荷物をまとめ、最後にパソコンの電源を落としていた。この部屋に帰ってくることは、当分ないだろう。

(行ってきます)

 快く送り出してくれた母に感謝し、町の外へ繋がる草むらに向かう。

 レッドが現時点で知る最高のポケモントレーナーは、その場所でレッドの見送りに来ていた。

 緑と赤を基調とした袴姿の淑女。それでいて少女と言っても過言ではない艶のある黒髪のボブカットと可憐な唇と瞳。

「エリカさん、ありがとう。僕はフシギダネと一緒に……立派なポケモントレーナーを目指します」

「ええ。期待していますよ」

 穏やかな微笑みと共に可愛らしく首をかしげる。レッドはドキンとした胸の高鳴りに戸惑いながら、紅くなった顔を隠すように帽子のつばでエリカの視線をさけた。

 しかしそんなレッドをお構いなしに、エリカはレッドに数センチというところまで近づき、レッドの両肩を優しく掴んでほぐす。

「力を抜いて……。旅は長く、つらいこともあるかもしれません。それに奮起するのもよし、けれど人に頼ること、ポケモンに頼ることも忘れないで。あなたは決して、一人ではないのですから」

「……うん」

 レッドは立派な敬語を言えたものではなかったが、エリカは気にしなかった。ポケモントレーナーとして高みを目指す同士、彼とは近い関係を望んでいる。

「セキエイ高原へ行く手順は大丈夫ですか?」

「うん。各地のジムバッチを8つ集めるんだよね。エリカさんも、セキエイ高原を?」

「……いいえ」

 意外だった。彼女がレッドの指導の中で見せてくれた草ポケモンの扱い方は、初心者のレッドから見ても凄まじい練度であることが見て取れたからだ。

「各地にはポケモンと様々な付き合い方をしている方たちがいます。私もその一人……例えポケモン達と戦いに赴く身でも、目指すものはセキエイ高原とは限りません」

「……」

 レッドには想像もつかない。一体彼女は、どうしてポケモンバトルをしているのだろう。

「私はタマムシシティにいます。レッドさん、あなたがその町に来るとき、私がどこであなたを待っているのか、わかってくれるのを期待していますよ」

 彼女の声は優しさに満ち、それでいて人を発奮させる魅力と愛が込められている。レッドはその全てを飲み込んで心体に循環させ、前を向いた。

「……はい」

「それでは、行ってらっしゃい」

「行ってきます!」


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