過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」
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156:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/26(土) 00:33:24.33 ID:ZPCws2+10
 エリカは最後に、レッドに案内したいところがあると連れ出した。

 そこはタマムシの郊外にある人里はなれた場所。そこから一本道でとなり町のヤマブキに行けるが、エリカはさらに道を外れ樹木森林の間の小道に入る。

 エリカのクサイハナが先導し、レッドのフシギソウも後に続く。

 森を抜けると、そこには秘密の花園。エリカとその側近数名しか知らない、草ポケモン達のエデン。

 一面の極彩の花々、レッドも感動し息を呑む美しさだった。

「あなたを送り出すのは、ここしかないと決めていました。私とポケモン達にとってかけがえのない大切な場所。私がはじめてポケモンの手を取った、始まりの場所……」

 花畑の中、エリカはレッドと手をつなぎ見つめる。

「ここで私は、もう一度歩き出します。勝ちたいから。自分の中の弱い自分に、もう一度……」

「……応援しています。あなたならきっと、身につけることができる」

「ありがとう……レッドさん」

 二人の手が離れる。 

「それじゃあ、エリカさん」

「待って」

(今まで意識してなかったけど、カスミの言っていることは、こういうことだったのね……)

 弟のように思っていた。しかし今は、エリカを支え手をとってくれる、共にいて心温かくなるこの少年のことが……。

 エリカは自身の指を唇に長く当てる。レッドが何をするのかと疑問に思っていると、エリカはその指をレッドの口に優しく押し付ける。

 呆然としていたレッドだったが、その意味を悟ると途端に顔を赤くして口をパクパクとさせたあと下を向いてしまう。フシギソウがやれやれと首を振った。

 エリカも最初はそんなレッドを可愛く思っていたが、次第に大胆な事をしてしまったと自覚し始め、結局レッドと同じく顔を赤くして俯いてしまった。

 顔をあげると視線が重なりあい、お互い吹き出して軽く笑い合う。

「また、会いに来ます。必ず」

「はい。私もレッドさんと、また……」

 もう一度手を握り合う。名残惜しげに指先が少しずつ離れていく。

 だけど、もう大丈夫。

 エリカは祈りを込めて。レッドは元気な姿を見せて。

「ハナ〜」

「フシ!」

「ご武運を。……行ってらっしゃい」

「はい!……行ってきます!」

 二人の道が交わる、その日まで。


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