過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」
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[saga]
2014/09/21(日) 17:56:45.32 ID:Z03kpI3k0
「……ああ。また先を越されたな、グリーン」
レッドは落ち着いている。レッドもまた、かつてグリーンと遊ぶときに待ち合わせていた時と同じような自然体で応える。
「ほう……ちょっと変わったか。まあ、それもそうだよな! こんなところまで来るんだから、変わってなきゃおかしい。まったく、待ちくたびれたぜ……あの時、トキワシティで受けた借りを返すこの日をよ……!!」
グリーンのにやついた笑みと裏腹に、その瞳は豪炎で燃え盛っている。猛る感情のままレッドへ言葉を放つ。
「俺はここに辿り着くまで、ポケモンバトルにおける最高のパートナー、そして最高の戦術、最高の連携を探した! 幾重もの勝利の経験が俺とポケモン達との絆を深め、気づけばリーグチャンピオンなんて肩書をもらっている。それが今の俺だ! だがな、それでも俺の頭ン中から離れないものがある!」
グリーンが腰からモンスターボールを取って親指で弾いて上にかちあげ、上空から落ちる軌道を見ずに片手で受け止めると、そのままレッドへ突き出す。
「いつも俺の後ろをとことこと着いて来た誰かさんが、俺に土を付けた。それもまたポケモンバトルだ。この日をどれだけ待っていたか、お前に想像できるかレッド!」
レッドは声を荒らげずに微笑んだ。
「俺も同じ想いさ。負けて得る悔しき感情に慣れを覚えず、また勝利を得る喜びを知ったその果てでグリーンが待っていたことには、俺もさほど不思議さを感じない」
「はっ! 随分と言うようになったじゃねえか! だがなレッド、まるで俺がお前のためのゴールテープのような言い様だが、お前が今立っているのは実力がものを言う世界だ。個人の感慨が深かろうが浅かろうが勝敗に左右することはない」
「わかっているさ。俺は俺のポケモン達と力を合わせた先、その光りある景色を見るためにここにきた。そのために、俺達には勝利がいる」
スタジアムの照明がレッドとグリーンを照らした。レッドはモンスターボールを顔の前に持ってきて、俯いてボールに額をつけた。
「数えきれないほど助けられてきた旅の果て、もう自分の不甲斐なさに涙を流しはしない。この戦いで、俺は俺の持つ全ての力を出し切ってみせる」
「ははっ! だったら教えてやるよ! 例え努力し戦術を練ろうとも、決して超えられない壁があるということをな。お前にとっての越えられない壁、それがこの俺だ! 泣き虫レッド!」
グリーンの声とともに試合開始のブザーがなり、大型ビジョンにはレッドとグリーンの横顔が相対するように並べられ、その間に6-6のスコアが表示された。すぐに場面は試合会場のグリーンに移り、グリーンは慣れた様子でカメラに映えるようにポージングして名乗りを上げる。
「リーグチャンピオン、グリーン!」
レッドは顔を引き締めてグリーンを直視した。
そしてレッドは高らかに名乗りを上げる。
「俺はもう泣き虫レッドじゃない。…………俺はマサラタウンのレッド、ポケモントレーナーレッドだ!」
『試合開始ィ!!』
「行け、ピジョットォ!」
「行きな、オニドリル!」
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