過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」
↓
1-
覧
板
20
411
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[saga]
2014/09/21(日) 18:03:23.78 ID:Z03kpI3k0
カントー地方を代表する2羽の巨鳥は、研鑽を積み逞しく成長した姿を誇示するようにスタジアムを旋回し、主の前で羽ばたきながら滞空した。
「借りを返させてもらうぜ」
グリーンの顔は笑っていたが、その声には屈辱を精算せんがための憤怒にも似た激情がつまっていたことを、レッドは敏感に察した。現れた2体は進化して姿が変わっているが、レッドが初めてグリーンに勝利した戦いと同じ組み合わせだった。
その組み合わせを二人が事前に打ち合わせたわけでは当然ないが、意図していないとは言い切れないところがある。今でも鮮明に思い出せる光景を、レッドは相棒と成長した姿として、グリーンは前述の激情がために、こうなることを期待していた。
観客席から多くのフラッシュが光り、観客たちも最初の両者の指示を聞き逃さんと一瞬静まり返る。レッドとグリーンの声が重なり、同じ指示を相棒へ飛ばした。
「そらをとぶ!」
既に飛んでいるじゃないかという突っ込みはこの場ではギャグにもならない。空中ポケモン同士の激突、とくに物理攻撃を得意とする2羽にとって相手よりも高所の位置取りは必須だった。高所を取れば標的の認識が容易く、また鳥足で相手を切り裂くこともできる。
ピジョットとオニドリルは風を切るように羽ばたき、腹を合わせるような形で並んで急上昇した。オニドリルの方が頭一つ早い。
「つばさでうつ!」
高所取りをあきらめたレッドが先制に出た。ピジョットが体の向きを変えながら翼を曲げなぎ払うように振ったが、オニドリルは感せずに上昇したために尻尾を掠めるだけ。
オニドリルとピジョットの位置する高度が一気に広がると、オニドリルは急に体を捻って向きを入れ替え、体を引力に任せて急降下し羽を揺するように動かしてピジョットへ猛進した。
「ドリルくちばし!」
「かぜおこし!」
ピジョットが羽ばたきながらオニドリルへ風を送り距離を取ろうとする。オニドリルは構わずに突っ込みそのくちばしでピジョットを捉えた。ピジョットの体が吹き飛ぶがすぐに体勢を立て直し、下降していったオニドリルを追いかける。
「ほう! よく耐えたじゃねえか!」
ギリギリだった。レッドはドリルくちばしを避けられないと踏み、せめてクリーンヒットにならぬようかぜおこしで軌道をそらすよう指示した。ピジョットもレッドの意図を察し体をよじってくれたために、ダメージを最小限におさえて反撃に出ている。
通り過ぎたオニドリルが高度をあげようと逆放物線を描くように進路を取ったため、ピジョットは高所を取りながら距離を詰めることができる。
「オウム返し!」
ピジョットのくちばしが眼下のオニドリルへと迫る。レッドの頬には冷たい汗が流れていた。ピジョットの体力を考えれば、もう相手のドリルくちばしを食らうわけにいかない。
(これで決める!)
「読めてるぜレッド!」
グリーンの叫びとシンクロしてオニドリルの首が上がり、同時に翼を広げたまま空中で見えない管に沿うように螺旋の軌道で横転した。オニドリルの方向と速度が変わらぬまま位置が横移動し、降下してきたピジョットのくちばしが空を切る。
再び上下が入れ替わり、オニドリルが落下体勢に入ってクチバシの照準をピジョットへ合わせる。
対してピジョットはそのまま着地し、オニドリルへ向き直り威嚇するように羽を広げた。
「行くぜえ、ドリルくちばし!!」
「身代わり!」
オニドリルの急降下攻撃がピジョットが作り出した身代わりを貫く。身代わりは一瞬で蒸発したが、その瞬間グリーンとオニドリルの表情が凍りついた。クチバシがそのままの勢いで地面へ突き刺さっていて身動きがとれない。
「ゴッド……バードっ!」
「ちいっつばさでうつ!」
ピジョットの光り輝く突進に対して、オニドリルが身を捩ってなんとか翼を合わせる。
オニドリルの体が吹き飛び、倒れ伏して動かなくなる。しかし側頭部を強かに打たれたピジョットもまた、前のめりに崩れた。
『ピジョット、オニドリル、戦闘不能!』
スクリーンの表示が5-5に変わる。
「いいガッツだったぜ。オニドリル」
「よくやった。ピジョット」
両者先鋒を称え、次の腰の相棒へと手を伸ばす。
「とりあえず、追いついたぜレッド。次で差を見せつけてやる」
まるでグリーンが挑戦者のような言葉、事実グリーンは今チャンピオンという自分の地位を忘れて、歪んだ笑みを深くして片目を閉じた。
レッドにはその顔に見覚えがある。いつも勝負事をしてきた二人、グリーンの圧倒的な力が披露される前兆だった。
<<前のレス[*]
|
次のレス[#]>>
439Res/432.17 KB
↑[8]
前[4]
次[6]
板[3]
1-[1]
l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。
過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」 -SS速報VIP http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/kako/1405179974/
VIPサービス増築中!
携帯うpろだ
|
隙間うpろだ
Powered By
VIPservice