過去ログ - CD-Rって未だに使ってる人いる?
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22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 17:49:27.58 ID:iVDKIOZ2o

ぼーっとさんは絵に描いたようなOLさんみたいな格好で,真面目そうな黒いフレームのメガネをかけてた.
それでさ,その分厚いレンズの向こう側がマンガみたいに泳いでるんだ.だから俺はちょっと笑っちゃった.
そしたらぼーっとさんは,余計に慌てだした.変だよな.
それ,大事なものだったんですか? ってぼーっとさんが聞くから,俺は,はいって返した.使うつもりだったからって.嘘じゃないよ.


23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 17:49:54.48 ID:iVDKIOZ2o
>>20 どんなエロいことに使うか聞いても良いのかな?


24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 17:52:31.98 ID:iVDKIOZ2o

ぼーっとさんは困った顔をした.いますぐ弁償したいけど,CDなんてこんな時間にどこをさがしても売ってないって顔だ.
案外コンビニに売ってたりするものだよって,教えてあげなかった.別にCDが欲しい訳じゃなかったから.
しばらく考えた後,これで代わりになりませんかと,彼女はUSBを引っ張り出した.あぁ,USBメモリだっけ?
俺は正直要らなかったんだけど,断るとぼーっとさんがますます困った顔をしそうだったから,おとなしく受け取った.
以下略



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 17:53:21.21 ID:iVDKIOZ2o

その日の夜,俺はUSBメモリをパソコンに差し込んだ.
役に立たないなら,本格的に要らないから.何かに使おうと思ったんだ.
そしたら,中にはいろんなファイルが入ってたんだ.旅行の写真とか,そういうどうでもいいものもあったし,仕事用のデータもあった.
ぼーっとさん,ぼーっとしすぎだよね.


26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 17:59:38.78 ID:iVDKIOZ2o

きっと困ってると思ったから,俺はそれを返すことにした.多分誰だってそうすると思うけど.
同じ駅の,同じ時間に,俺はUSBメモリを片手に立ってたんだ.
昨日の政治家は今日も頑張るらしかった.
のぼりには大きく脱原発の文字.俺も賛成だよ.
以下略



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 18:00:28.04 ID:iVDKIOZ2o

開いたカバンの口からは,CDケースが飛び出していった.黄色のやつだ.
地面で2,3度バウンドする内に,ケースが開いて,いくつかのパーツに分離して,それからスライディングしていく様がはっきり見えたね.
構内に響く乾いた音に,通行人の視線が一斉に集まったのを感じた.
でも俺はね,それよりもまんまる鮮やかな黄色い円盤が,ユーフォーみたいにアクロバティックな空中遊泳を見せたことに,感動していたんだ.
以下略



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 18:01:05.12 ID:iVDKIOZ2o

誰かは知ってたけど返事はしなかった.だって俺の網膜には,まだ黄色い残像の軌跡が残ってたから.
ぼーっとしてたんです.わざとじゃないんですって,ちょっと必死な言い訳が聞こえた.
それも知ってたよ.
俺はCDを拾い上げた.あちこちに擦れた傷がついてた.
以下略



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 18:04:01.21 ID:iVDKIOZ2o

ヒンジが折れているから,もうくっつかないだろうなぁって,他人事のように考えてたよ,俺は.
ぼーっとさんは泣きそうになってた.黄色い革張りの定期入れを,ぎゅっと掌に食い込ませてるんだ.
俺はそれに,ちょっとぐっときてしまった.
俺がUSBメモリーを返してやると,ぼーっとさんはすごく喜んで,それからとても申し訳なさそうな顔をしたんだ.気持ちはわかるな.
以下略



30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 18:06:02.33 ID:iVDKIOZ2o

それから何度か,2人で食事したり,遊んだりするような間になった.
元がああいう出会い方だったからかな,ぼーっとさんはすごく気を遣って借りて来た猫みたいにしゃんとしていたんだけど,俺がそういうのはもう良いよって言うと,だんだん打ち解け始めてくれた.もちろん,おごってもらったのは最初の1回だけだよ.
ぼーっとさんは映画が趣味で,一番好きなのはバッファロー'66らしい.冒頭,ビリーが電話越しにマム,俺だよと語りかけ,そのあと無関心な母親を怒鳴りつけるシーンがすごく好きなんだって.変なセンスだ.一緒に鑑賞をさせられたけれども,俺は半分以上眠ってしまったな.
ピストルで自殺をするシーンは好きだよ.あれ,本当はしなかったんだっけ.


31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 18:08:13.38 ID:iVDKIOZ2o

ぼーっとさんは,普段からやっぱりぼーっとしていて,何も無いところでこけるような女だった.
小銭を調整するのが下手で,いつも財布はパンパンになっていた.
お酒が好きで,俺の部屋にくる度に,たくさん珍しいボトルを持ち込んでは饒舌に映画の話をするんだ.
料理は下手だし,彼女が来るといつも余計に部屋が散らかってしまった.
以下略



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/18(金) 18:09:47.58 ID:iVDKIOZ2o

ぼーっとさんが俺の部屋に来る回数はだんだん増えて,それに合わせて食器棚にはお酒のビンが並んでいった.
俺が持ち帰りの仕事をしている間,ぼーっとさんはいつもスマートフォンを片手にぼーっとしていた.ストラップには見たことも無い,マリモみたいなキャラクターがくっついていた.スマートフォンは何度も落下の憂き目に会っていて,あちこち傷がついていたのを覚えている.
俺の書類作りが終わったら,ぼーっとさんはにこにことお酒のビンを引っ張り出してきて,美味しくないおつまみを作ってくれた.
そうして,不思議な映画を一緒に見ては,その感想を少ないボキャブラリーで語るんだ.


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