103:ふもふも ◆Bn1tZJHOB6[saga]
2014/08/19(火) 06:09:08.83 ID:nF4trx14O
「あなたのダンスは完璧。決められた動きを忠実にこなしている。でも、あのディスクに映るあなたの顔は全然楽しそうじゃなかった。見かけは笑っていても、心が笑っていない。そんな……」
「もう黙って!」
ロッカーを叩く音と共に、英玲奈の声が更衣室を震わせた。
「あなたに私の何がわかるの……常に最高のパフォーマンスの何が悪いの……見てくれる人に最高のものを届ける、自分が楽しいかなんてどうだって……」
「見て貰う私たちが楽しくないのに、見ている人が、楽しめる? 私は小さい頃に見たアイドルの楽しそうな笑顔に憧れてこの世界を目指したの。だから、信じたい。私が目指したあの人たちは好きであそこに立っているって、決して仕事だからとかではなくて、歌もダンスも楽しいからステージに立っているってね」
「そんな事を言うのはあなたがまだ候補生だから?」
「いいえ、これは私の、綺羅つばさとしての意見よ。でもそうね、確かに私はまだ候補生で、そういう風に思われるのも仕方ないか」
「分かったなら、もう今後私に関わらないで、放っておいて」
「嫌よ」
「……っ」
英玲奈がぐっと奥歯を噛み締める。
「だってようやく本当のあなたに会えたんだから」
「何を言って……」
「今のあなたの顔、とても表情に溢れている。今まで見たことがない、とても強い感情が見てとれる」
笑いながらつばさはロッカーの陰から姿を現した。
ブラインドの隙間から差し込む夕日の光を背に受けながら、つばさは挑戦的な眼差しで言った。
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