16: ◆g2XWKdhKyM[saga]
2014/07/23(水) 22:53:04.30 ID:ZXrvAdcT0
「海が見たいです」
少女がそう言うので、海岸にやってきた。さっき残した足跡は、まだ残っていた。
少女は目を輝かせると、おもむろに服を脱ぎだして海へ飛び込んだ。
目を背けなければならないが、少女の安否を確認しなければならない。
しかし、人を見殺しにしてしまったなどと噂が立っては困るし、沈んだ長門にも申し訳ない。
ちらりと目を向けると、少女はスクール水着に身を包んでいた。
「今日は水泳の授業があったんです」
「でも学校はお休みする予定だったのでしょう」
「ええ」
僕は首を傾げた。
「提督さんも一緒にどうです」
「いえ、僕は結構です」
実はカナヅチ、なんてことがバレては困る。
「遠慮せずに」
「いえいえ」
「あれ、もしかして海軍さんなのに泳げないの」
「待っててください」
少女がおかしそうな目を向けるので、僕はしゃくになり、箪笥の奥底に沈んだ水着に着替えて戻ってきた。
水泳の訓練を思い出し、頭痛と懐かしさが襲ってくる。
「提督さん、こっちですよ」
数メートル前方に居る少女にむっとなり泳ぎだすと、とつぜんぐんっと前に引っ張られ、ほとんどころぶようにうつぶせになって進み始めた。
結局長門には水上スキーを教えてもらえなかったことを思い出し、涙が出そうになるがぐっとこらえる。
「わ、すごいすごい」
いつのまにか十数メートルも泳いでいた。少女がパチパチと手を鳴らして僕に賞賛の言葉を贈る。
「やればできるじゃないですか」
「僕を誰だと思っているんですか」
そう強がりつつも、なんだかカナヅチを見透かされていたようで、僕は恥ずかしくなった。
27Res/16.62 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。