38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 15:36:44.39 ID:9uLTT2Jd0
「ラジカセ使って、その場で聴かせてやったら、二つ返事でオーケーもらったぜ。
あのオヤジ、この間別の子の売り込みで会った時はほとんど無関心だったクセによ」
シャンディガフを美味そうに飲みながら、高木は誇らしげに語った。
外回りで我が事務所の評判を落とすようなことをしていないか、心配だ。
「あまりそう品の無い行動は慎めよ。
ただでさえお前は風体がみすぼらしいのだから、ネクタイくらいちゃんと締めていけ」
「何だその言い草は、営業の時は締めてるって。
それより、お前の方はどうだったんだよ」
「正直、過度な期待をしていなかった大手の会社が、感触良く接してくれた。
阿夕悠氏と者倉俊一氏への楽曲提供依頼も、検討してくれるそうだ」
「ま、マジかよっ!?」
高木が驚くのも無理はない。どちらも、アイドル音楽界の第一人者だ。
善澤も、「ほぉー」と一応の反応を示す。
「聞いたかよ善澤。今ならお前に彼女の取材、優先的にさせてやってもいいんだぜ」
「俺は芸能記者を目指してないしな」
そう言って煙草を吹かす善澤の背中を、高木はバンバンと叩く。
「僕も驚いたよ」
未だ覚めやらぬ興奮を抑えようとグラスを取ったが、既に中身は空だった。
「あっ、いいよ黒井。マスターごめん、俺のもついでにお代わりちょうだい」
「お勘定、払ってもらえるんだろうな」
「だ、大丈夫ですよ――僕達だってそれなりに働いてるんですから」
マスターが疑り深い目で見ながら、僕のカルーアミルクと高木のシャンディガフを作る。
このバーは、僕達くらいしか客が入っているのを見たことが無い。
そのくせ、マスターは少し気難しい性格の男で、お客を楽しませる気概が感じられない。
潰れてしまえ、と何度も三人で悪口を言ってやったものだ。
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