41: ◆YkC6iYZjHk[saga]
2014/07/27(日) 21:57:34.30 ID:k1ViwbC00
提督「それでだ。どうしてこうなったと思い発注書を読み返してみたんだが俺がそんなものを発注した記録が一切ない。そもそも『美味しい清涼飲料水』なんて怪しいものを発注すること自体ありえんしな」
元帥「どこかで混入したということか」
提督「ああ。俺もそれを疑ったよ。だから関係先に片っ端から電話して確かめたんだ。だがどこも分からないようだった。そして最後の関係先がお前なんだよ」
しばしの沈黙。
電話口で元帥は目をそらした。これはいわゆるオーテ・ツミの状態!
元帥「・・・バレた?」
提督「バレバレ」
元帥はあっさりと認めた。
提督「そもそも発注データを受け取り、指示するのは元帥府の仕事。書き換えがあるとすれば元帥府以外ありえん」
元帥「ですよねー」
提督「おかげで明日は多分俺を除いて全員2日酔い確定だぞ。第1鎮守府が機能停止する意味を知らんわけではないだろうに。先に言ってくれりゃぁ対応できたのに―――」
提督の憤りももっともである。西南・南方・東南にある第1鎮守府はそれぞれの防衛の要であり最前線である。それが機能停止するということは鎮守府には襲撃される可能性が生まれ、後続の中将に負担を強いることを意味しているからだ。
本土にとっても対岸の火事ではない。第1鎮守府は本土防衛のため他の鎮守府ではありえないほどの広範囲の索敵と敵の各個殲滅を行っているからだ。機能停止中に漏れた場合本土付近にまで新型もしくはフラグシップ級の深海棲艦が襲撃に来る可能性があることを意味していた。
提督「でもまぁ・・・送ってくれことに感謝はするよ。こっちじゃ上質のアルコールは滅多に手に入らないからな」
物資の送られてくるタンカーの中身は基本必需品優先である。また鎮守府の備蓄に余裕を持たせなければならないため嗜好品を乗せるスペースはかなり制限されているのだ。その為本土では2000円もするパフェが1000円で食える代わりに本土では1000円の酒がこちらでは2000円するという現象が起きているのだ。
元帥「それで・・・最重要品は確保できたのかな?」
提督「無論だ。あいつらに飲ませるにはもったいなさすぎる酒だ。特に隼鷹と千歳にはな」
そういう提督の机には『能代』と赤い字で書かれたラベルを持つ1.8リットルの瓶が3本置かれておりそのうちの1本の封は開いている。この酒は 特別大吟醸 朱金泥能代 醸蒸多知。日本酒の中では最高級品であり年間60本しか生産されない逸品で本土であっても1本10万超えの価格なのだ。
提督はついである酒を口にすると口調を変えた。
提督「それで」
空気が変わる。先ほどの楽しげな空気は消え、張りつめた仕事の空気に変わった。元帥もそれを察し真面目になる。
元帥「ああ。前回のタンカーの沈没だがまた仕組まれた可能性が高い。魚雷が直撃した割には爆破跡がおかしいからな。極めて巧妙に爆薬を配置し魚雷直撃に仕立て上げたと考えるのが妥当なところだ。我々でなければ見逃しているほどにな」
提督「しかもその時には深海棲艦のタンカー襲撃があった。あまりにも出来過ぎている。俺の薬が乗っている船は毎度毎度襲撃されるから身構えもするさ」
元帥「お前にだけはどうしても死んでほしいようだな。彼らは」
提督「それだけのことをしたんだ。命を狙われることは慣れてるよ。だが・・・この国を巻き込むことには感心しないな」
元帥「どうする?」
提督「決まってるだろ。必ず見つけだし、どこまでも追い詰め、例え便所に隠れていても息の根を止める。それだけだ」
元帥「分かった。死ぬなよ『』」
提督「お前もな『』」
お互い今は名乗ることもない名を呼び合い電話を切った。
提督は日本酒を見つからない様に暗所冷蔵の場所に隠すと呟く。
提督「寝るか・・・」
15分後。鎮守府から全ての明かりが消えた。
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