過去ログ - 春香「スタンド・バイ・ミー」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/26(土) 01:35:39.48 ID:wec68il0o

 プロデューサーさんの評判は、正直に言うと良くはない。

 真なんかは、あの人は喋らないし不気味だーなんて私に言ってくる。
 確かに、自己紹介、プロデュース方針、仕事終わりの挨拶――それぐらいしか、喋らない。
 私とプロデューサーさんの間に、いわゆる『世間話』はほとんど無かった。


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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:36:19.27 ID:wec68il0o

 でも――それでも良いと、私は思っている。

 前に千早ちゃんのプロデュースを担当していたことがあるらしい。
 結局プロデューサーさんと千早ちゃんは意思疎通が出来なくて、離れてしまった……と聞いた。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:36:46.23 ID:wec68il0o

「お疲れ様、春香」

 楽屋を出ると、壁にプロデューサーさんが寄りかかっていた。いつも通り、何も変わっていない。
 プロデューサーさんとの間に会話が少ないのは寂しいけれど、人には得意不得意があるのだ。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:37:13.14 ID:wec68il0o

「事務所に帰るだけだ。どこかに寄っていく?」

「いえ、良いですよ。帰りましょう、プロデューサーさん」

以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:37:48.35 ID:wec68il0o

 といっても、喋らないというのは事実であって、こればかりは「違うよ」と否定もできない。

「今日の私のステージ、どうでしたか?」

以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:39:18.83 ID:wec68il0o

 車は地下駐車場から地上へと出て、そのまま首都高速の入口へと向かっていく。
 スピードを出して走る乗用車から見る東京の夜景は綺麗だった。

「綺麗ですね」
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:39:49.37 ID:wec68il0o

「……春香は」

「はい?」

以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:40:34.22 ID:wec68il0o

 普通のアイドルとプロデューサーの関係なら、知り合って最初にするような質問だった。
 それにしても――アイドルになりたいと思った理由を聞かれるなんて、思いをしなかった。

「えっと」
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:41:09.31 ID:wec68il0o

 プロデューサーさんの横顔を覗いてみると、あいも変わらずといった感じだった。
 言ったことは無かったけれど、流石に知っていたか。

「だから、あんまり娯楽がなくて。友達と遊ぶのが、一番の楽しみだったんですよね」
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:41:43.86 ID:wec68il0o

「近所の公園で、友達と一緒に歌うことが一番の趣味、だったかなぁ」

 街の小さな公園で、大声で歌っていたこと。
 風に乗った歌が、遠くの知らない誰かの耳に届くような、そんな感覚が好きだった。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:42:10.76 ID:wec68il0o

「そのお姉さんと一緒に歌うのが、とっても楽しくて。私たちの歌声に、足を止めてくれる人も居たんですよ」

「すごいじゃないか」

以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:42:50.12 ID:wec68il0o

 プロデューサーさんは黙って、何か考え込んでいるようだった。
 赤信号で再び車が止まった時に、質問された。

「春香にとって”アイドル”は、歌? 踊り? それとも見た目?」
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:43:18.71 ID:wec68il0o

「全部です」

「全部」

以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:43:46.43 ID:wec68il0o

「ダンスも歌も、お芝居も……全部こなすアイドルって、格好良くて。
 レッスンを受けて、一緒に歌ったお姉さんに気づかれるぐらいのアイドルになりたいな、って思ってるんです」

 熱中すると喋り過ぎてしまう、そんな悪い癖が出た。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:44:29.21 ID:wec68il0o

 私が信号のことを伝えようとすると、後ろの車から控えめにクラクションが鳴らされた。
 車はゆっくりと発進し始めて、月明かりに照らされた歩道橋の下を通過した。。

「悪い」
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:45:19.20 ID:wec68il0o

「えっ?」

 プロデューサーさんは珍しく――というか見る限りでは初めて――微笑んでいた。
 相変わらずあまり喋らないけれど、その表情は多分、プロデューサーさんなりのエールなんだと思う。
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:45:51.03 ID:wec68il0o

「そういえば」

 しばらく経って私が口を開いたのは、駐車場と事務所のある大通りに車が入ったからだった。
 滅多に無い、プロデューサーさんと会話できるチャンスなのだ。もう降りてしまうのは、勿体無い。
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:46:21.02 ID:wec68il0o

 知ってます、と言いかけた。そんなに失礼なことは言えない。
 多分、喋らないことを一番本人が気にしている。営業先で無愛想と言われているのを、見てしまったこともあった。

「みんなに迷惑かけすぎてて。でも、担当する娘のことくらい、ちゃんと聞かないとって思ったんだ」
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:46:49.15 ID:wec68il0o

「プロデューサーさん」

「え?」

以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:47:37.10 ID:wec68il0o
終わり。さっぱり系目指したけど技量不足。出直してきます


21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/07/26(土) 01:49:07.48 ID:hTLOx+Amo

さっぱり系に言うのもアレだが欲を言えばもっと読みたかった


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