6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:39:18.83 ID:wec68il0o
車は地下駐車場から地上へと出て、そのまま首都高速の入口へと向かっていく。
スピードを出して走る乗用車から見る東京の夜景は綺麗だった。
「綺麗ですね」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:39:49.37 ID:wec68il0o
「……春香は」
「はい?」
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:40:34.22 ID:wec68il0o
普通のアイドルとプロデューサーの関係なら、知り合って最初にするような質問だった。
それにしても――アイドルになりたいと思った理由を聞かれるなんて、思いをしなかった。
「えっと」
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:41:09.31 ID:wec68il0o
プロデューサーさんの横顔を覗いてみると、あいも変わらずといった感じだった。
言ったことは無かったけれど、流石に知っていたか。
「だから、あんまり娯楽がなくて。友達と遊ぶのが、一番の楽しみだったんですよね」
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:41:43.86 ID:wec68il0o
「近所の公園で、友達と一緒に歌うことが一番の趣味、だったかなぁ」
街の小さな公園で、大声で歌っていたこと。
風に乗った歌が、遠くの知らない誰かの耳に届くような、そんな感覚が好きだった。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:42:10.76 ID:wec68il0o
「そのお姉さんと一緒に歌うのが、とっても楽しくて。私たちの歌声に、足を止めてくれる人も居たんですよ」
「すごいじゃないか」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:42:50.12 ID:wec68il0o
プロデューサーさんは黙って、何か考え込んでいるようだった。
赤信号で再び車が止まった時に、質問された。
「春香にとって”アイドル”は、歌? 踊り? それとも見た目?」
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:43:18.71 ID:wec68il0o
「全部です」
「全部」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:43:46.43 ID:wec68il0o
「ダンスも歌も、お芝居も……全部こなすアイドルって、格好良くて。
レッスンを受けて、一緒に歌ったお姉さんに気づかれるぐらいのアイドルになりたいな、って思ってるんです」
熱中すると喋り過ぎてしまう、そんな悪い癖が出た。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:44:29.21 ID:wec68il0o
私が信号のことを伝えようとすると、後ろの車から控えめにクラクションが鳴らされた。
車はゆっくりと発進し始めて、月明かりに照らされた歩道橋の下を通過した。。
「悪い」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/26(土) 01:45:19.20 ID:wec68il0o
「えっ?」
プロデューサーさんは珍しく――というか見る限りでは初めて――微笑んでいた。
相変わらずあまり喋らないけれど、その表情は多分、プロデューサーさんなりのエールなんだと思う。
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