17: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/07/29(火) 20:35:48.44 ID:YJpQUpwa0
「何も信じないことだ。俺はこの世の全てを信用していない。無論、自分なんて世界一信用出来ない。最初から何も信じない人間を騙すなんて真似は例え怪異でも無理な話だ」
唯一信用していると言えば金だ。
金はいい。
この世の全てを動かせる代物だ。
何よりも金は俺を騙そうとはしないしな。
いつだって騙したり騙されたりするのは人間の方だ。
「佐久間まゆ。俺はなぁ、自分を一番信用していないんだよ」
「そんな……そんな人が」
「いるんだよ。お前の目の前にな」
世の中に、自分ほど信用出来ない奴などいるものか。
俺はいつだって俺を裏切りやがる。
俺さえ俺の思い通りに動いてくれれば、今頃は。
らしくない。
何を考えているんだ、俺は。
「……絶対に叶わない願いが叶うと言われて、目の前に美味しい話を差し出されて、断ち切れって言うんですか!?」
「別に。お前さんは正しいよ佐久間まゆ。ただで金をくれると言われたら俺だって二つ返事で貰う。俺も命より金が好きな人間だ。金のためなら死ねる」
「まゆは、プロデューサーさんが大好きなんです……プロデューサーさんの為ならなんでも出来ます。世界中の誰よりもプロデューサーさんが好きだって自信があります。だから、どんなに辛くても、世界中の人達を騙す結果になっても、平気なんです……!」
くだらない。
好きだからって何でもかんでも思い通りに行くのなら、俺だって世界中の森羅万象が好きだよ。
佐久間が言っているのはガキが駄々をこねているのと同じだ。
理屈も道理もない、愚直で蒙昧な戯言だ。
なのに、それがどうしてこんなにも心をざわつかせる?
「どうしてですか? どうして邪魔をするんですか? あなた……貝木さんには関係のないことじゃあないですか」
確かにそうだ。
阿良々木には腐れた縁こそあれど、助けてやる義務は勿論、義理もない。
虚節は世界を修正する。
このまま放っておいてもただ単に戦場ヶ原と佐久間まゆの立場が、阿良々木暦の恋人、という位置で変わるだけ。
俺が不利益を被る訳でもなければ、何が変わる訳でもない。
俺が黙ってさえいれば世界は何事もなく廻り、やがて佐久間は死ぬだろう。
佐久間が死ねば阿良々木は当然のように、近い時期に接触して訳のわからんことを言った俺を疑うだろう。
あいつは吐き気がするほどの博愛主義者だからな、恋人でないとわかっても激怒するに違いない。
俺だけが佐久間まゆの死因を知っている世界。
ああ、そうだな。
そいつは、たちの悪い冗談だ。
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