16: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/07/29(火) 20:33:57.47 ID:YJpQUpwa0
「虚節」
「……なんですか、それ?」
「お前に取り憑いている怪異の名だ。そんな事はどうでもいいがお前、ちゃんと理解しているのか」
「理解って、何をですか?」
「虚節は取り憑いた人間の願いを、当人以外を騙すという形で叶える。それこそ今までの常識を覆すレベルでな。お前は阿良々木と恋仲になることを願った。そこまではいい」
そう、そこまでは依頼の範疇だ。佐久間まゆが善悪に関わらず虚節を使用して何かをしている、というところまでは忍野も突き止めた。
「その代わり、憑かれた宿主は常に餌としての生気を呑まれ続ける。嘘をつき続けるのが楽ではないといういい教訓だ。詐欺師としては喉から手が出る程に欲しい能力とも言えるが、燃費が悪すぎて俺は欲しいとは思わんね」
そして、ここから先の問いが、佐久間まゆという個人を量る試金石となる。
「さて、佐久間まゆ。お前はその事を理解出来ていない馬鹿なのか、理解している馬鹿なのか、どっちの馬鹿だ?」
前者ならば同情の余地もない。
佐久間まゆは真性の馬鹿だったというだけの話だ。
即座に仕事を終えて帰るとしよう。
前者の方がまだ可愛げがあるが、どちらにせよ佐久間から虚節を引っ剥がさなければいけない以上は無駄な質問だ。
だが。
虚節が希少種として扱われる理由には、気付きにくいということに加え、宿主がすぐに絶命してしまうことにある。
先程生気を呑まれる、と表現したがそれもかなり包んでの表現だ。
実際は途方もない疲労に加え頭痛や吐き気は勿論、毎晩激痛が絶え間無く襲うお陰でまともに眠ることもままならないと聞く。
それ程までに虚節を使用する時のコストはでかい。
まぁ、世界ごと歪めるのだから当然と言えば当然だ。
佐久間も俺や阿良々木の前でこそ平然としているが、その実はかなりの割合で蝕まれている筈だ。
「わかっているのか、お前、このままでは骨と皮だけになって死ぬぞ」
アイドルというやつは不思議な生き物だな。
媚びを売り外見とキャラクターだけで儲けている輩の集まりかと思ったが、こんな奴もいる。
虚節さえ回収出来れば佐久間まゆが死のうが俺の知ったところではない、が。
「なぜ……貴方はわかっているんですか……?」
他の誰も気付かなかったのに、と歯噛みをする佐久間まゆ。
ああ、本当に面倒だ。
なんで俺がこんなことをしなくちゃならないんだ。
「俺が偽物だからだ。それに俺は神をも騙した詐欺師だぜ。立派な詐欺師になるための初めの一歩を教えてやろうか」
金にもならんのに珍しく饒舌になっている自分に驚く。
俺を差し置いて誰かを騙そうなんて、怪異の分際で生意気なんだよ、お前。
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