過去ログ - 【オリジナル】少女「ドラゴンの王子様？」【長編】 -SS速報VIP

過去ログ - 【オリジナル】少女「ドラゴンの王子様？」【長編】

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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/07/30(水) 21:02:21.85 ID:PBUR3c1n0
だいぶ前に書いた小説を、暇つぶしに載せていきます。

ファンタジーもののオリジナル長編小説です。

読みやすいように改行は入れますが、基本的に地の文が大半ですので、ご了承下さい。

◇

また、ご閲覧いただくにあたりお願いがあります。

時たま応援の書き込みをいただけますと嬉しいです。

投下速度は早めだと思いますので、規制にかかったら投下が途絶えます。

その際は再開まで気長にお待ちください。

◇

――全ての人に幸せと平穏がやってきますように……。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:04:01.22 ID:PBUR3c1n0
１．ドラゴン

その夜、彼女は風を裂く音と共に、満天の月に照らされた、天を覆うほどの翼をその目にした。

屋根裏部屋から、ぼんやりとその光景を見ていた。

3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:06:35.27 ID:PBUR3c1n0
空には薄く雪がちらついていた。

暖房もない屋根裏は凍えるように寒く、彼女……ナキは擦り切れた毛布に包まりながら、両手をすり合わせて空を見ていた。

段々と、そのはためくコウモリの翼は落ちていき、そして山の向こう側に消えた。

4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:08:05.76 ID:PBUR3c1n0
壁にかけられたくたびれた時計が、カチリと夜中の十二時を指した。

ゴミ捨て場から拾ってきたものだ。

その無機質なコチ、コチという音を聞きながら、ナキは自分の両肩を抱いて小さくなった。

5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:09:37.84 ID:PBUR3c1n0
だって、今日は私の誕生日。

それなのに私はここで一人。

たとえ今見たものが、悪魔だったとしても、私の誕生日が終わったということは変わらない。

6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:11:19.90 ID:PBUR3c1n0
◆

誕生日の朝だろうと、いつもと変わらない怒号で、少女は目を覚ました。

「いつまで寝てるんだい！とっとと起きて水を汲んでくるんだよ！」

7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:13:09.81 ID:PBUR3c1n0
しかしそんなことを説明しても、どうせ鞭が飛んでくるだけだろう。

そう思い、ナキは震えながら汚れたポンチョを頭から被り、裸足のまま階段を降りた。

今日、十二歳の誕生日を迎えた。

8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:14:31.20 ID:PBUR3c1n0
女性の耳はツンととがっていて、涙のような形をしていた。

人間ではない、森の妖精と言われる、シルフという種族だ。

ナキには、反面目に付くような特徴が何もなかった。

9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:16:09.14 ID:PBUR3c1n0
「はい……」

素直に頷いて、軽くふらつきながら脇の桶を持ち上げる。

口答えをしてぶたれるよりはましだ。

10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:18:49.90 ID:PBUR3c1n0
少し体を震わせてから、ナキは思い切って、雪にくるぶしまで埋まらせながら歩き出した。

途中で小さくくしゃみをして、何とか家の裏の井戸にたどり着く。

手を擦り、そして桶を縄に結び付けて下に放る。

11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:20:06.16 ID:PBUR3c1n0
次いで、おばさんそっくりのがみがみした耳障りな声が耳に入る。

「ナキはどこ？」

「今外で水を汲ませてるよ」

12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:21:19.03 ID:PBUR3c1n0
おばさんそっくりの、恰幅がいいシルフの娘が、まるで汚いものを見るかのような目でナキを見ていた。

この家の娘である、リフだった。最近二十の成人を迎えたのに、まだ結婚相手が決まらないので、彼女はその鬱憤をナキに当り散らすようになっていた。

シルフは大概成人前に結婚する。遅れてしまっているという苛立ちが、最近全部向けられているので、自然と体が萎縮してしまう。

13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:24:36.33 ID:PBUR3c1n0
膝から下が冷え切ってしまい、痛い。せめて両手に息を吹きかけると、潰れた血豆がしくじくと痛んだ。

ため息をついて、彼女は空を見上げた。

まだ分厚く雲がかかっている。今日はまた、雪が降るかもしれない。

14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:26:04.44 ID:PBUR3c1n0
俯いてまた歩き出す。

それが、ナキの日常だった。

山羊の乳を搾った後は、食事を作る。

15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:27:13.02 ID:PBUR3c1n0
こんな生活が始まって、何度目の誕生日なのだろうか。

熱に浮いた頭では、考えようとしても霧のように散ってしまい、まとまらない。

また小さくくしゃみをして、彼女は背中を丸めて足を踏み出した。

16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/07/30(水) 21:28:09.68 ID:agyZqr1H0
面白いですね！支援＆期待です！

17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:28:58.82 ID:PBUR3c1n0
「ええ。今日出来上がる予定。後でナキにとりに行かせるわ」

「貴族も沢山来るんでしょう？リフちゃん、今度こそしっかりと取り入ってくるのよ」

バーノンおばさんがそう言うと、大きくおじさんも頷いた。

18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:31:28.48 ID:PBUR3c1n0
ドラゴンというものをナキは見たことがなかったが、少なくともリフのような娘が、貴族の目に留まることが出来るとは思えなかった。

貴族は、大きなお城に住んでいて、綺麗な服を着ていて、とても優美だというイメージがナキにはあった。

一度街の外れを行進している貴族の移動列を目にしたことがあったのだ。

19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:32:45.59 ID:PBUR3c1n0
流れるような白い髪に、透き通るような青い目をしている人だった。

まるで人形のようだったという記憶がある。

ああいう人を貴族っていうんだろうな、とその時は思ったものだ。

20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:34:17.10 ID:PBUR3c1n0
「何突っ立ってるんだい。食器を片付けて洗ってきな。それから、薪が足りなくなったから、山から切り出してくるんだよ」

「え……でも、雪が……」

雪が積もっていて、山の中に入るのは躊躇われた。

21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/07/30(水) 21:35:30.62 ID:PBUR3c1n0
中のぬるくなったスープが頭からかかり、目の前にコップが落ちる。

分厚い陶器だったゆえに割れはしなかったが、突然の暴力に縮こまり、ナキは消え入りそうな声で

「ごめんなさい……」

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