過去ログ - ハルトマン「渚にて」
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44: ◆os0EtCPvIM[saga]
2014/08/19(火) 22:38:32.32 ID:4LyFGn8UO
「や、やめ……!」

強い嫌悪感を覚えた私は、目の前に伸ばされた手を払いのけた。手のひらに兵士の血液と脂肪がぬるりとまとわりつく。
そんなに力を入れたつもりはなかったけど、バランスを崩された兵士はそのまま前のめりに転んでしまった。

「ご……ごめん。大丈夫?」

少しだけ平静を取り戻して、倒れた兵士に声をかける。ところが、兵士の返事はない。

「ねえ、どこかで治療してもらわないと……」

兵士を立ち上がらせるために手を差しのべて――途中で引っ込めた。
触りたくなかったんじゃない。
倒れた兵士からは、もはや『生』の気配は感じられなかった。

「う、ああ」

2、3歩後退りしてから、後ろを向いて駆け出した。

私のせいじゃない。
タイミングが悪かっただけだ。どうせ助からなかったよ、あの傷じゃ。
私のせいじゃない。

ふと右手に目をやると、あの兵士の血がべっとりとこびりついている。
服の裾でごしごしと拭っても、脂と混じった血液はなかなか落ちない。
半狂乱になりながら服が真っ赤になるまで拭いたけど、血の臭いはいつまでも染み付いていた。


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