39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/10(日) 17:02:10.60 ID:PqSllGERo
「そんな顔しないでください。
さ、ちゃんと立って。行きますよ」
そう言って私の汗ばんだ肩を優しく起こすと、
まだぼんやりする視界の数十センチ先で、
海未はそそくさとカバンを背負って振り返る。
家並みの隙間から差し込む光に照らされたあの子は、
やっぱり一枚絵のようにきれいだった。
見返り美人、って浮世絵の題材だったかしら。
気温はそれほど変わってないのに、
風鈴みたいに揺れる髪を指先で後ろに流す姿がやけに涼しげに映った。
あの子が手をさしのべる、まだぐずついていた私に。
触れた指先すらも水しぶきみたいに冷たく思える。
この手を引き上げる、
たおやかな腕の線に少し見とれてしまって、
私はまた転びそうだった。
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