過去ログ - 【Fate】君達が紡ぐやる夫の物語【安価とコンマで聖杯戦争】 -SS速報VIP

過去ログ - 【Fate】君達が紡ぐやる夫の物語【安価とコンマで聖杯戦争】

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871:1 ◆JwraddSSjo[saga]
2014/08/26(火) 02:58:35.53 ID:Ae+SA1uyo

一人の少女は夜空の下、絢爛華麗に舞う。

只管に想い人の為に廻り続ける。

―――月は見えない。

何処までも伸びた曇天の空は無慈悲に月明かりを遮る。

鋭利な脚先だというのにコンクリートの地面に一切傷を付けずに、少女はただ舞う。

時に、空に有るはずなのに、雲に遮られて視えなくなった向こうの月に目掛けて手を伸ばす。

―――好きなのに上手く行かない。届かない。実らない。

それが定められた運命なのに、何を今更と少女は笑った。

何とも哀しい在り方。ただ奪って愛でることしか出来ない、何処までも一方通行の恋。

ただの人であるあの人には、きっとそれは毒にしかならず。

メルトリリス「…それでも私は好きなのはくのん」

届くはずのない呟き。

人知れずに、そして誰も居ないはずの帳が下された世界の中での呟きは、届いていた―――

それは私のアルターエゴ。半身。何処までも燃え盛る火のような自我を持った真逆の男。

貴方「―――なるほど。それが君の想い人の名か」

メルトリリス「―――無粋ね。武士道に生きる男なら、聞いても聞かない振りをするのではなくて？」

メルトリリス「よりによって叶わぬ恋幕を耳に入れるなんて」

彼女は俯きながら答える。聞こえるのは言葉だけでなくて歯軋りの音。

それに反して貴方は腕組みを解かず、瞼を閉じたままだった。

貴方「それに関しては謝ろうではないか。だが半身を放ってなど置けると思うか？」

貴方「部屋を出る際にあのような儚げな表情を浮かべられたら尚更だ」

彼女は息を呑んで。そしてその言葉に肩を震わせて声を荒らげて、返した。

メルトリリス「黙りなさい！貴方に分かるはずがない！私の届かないこの気持が！」

貴方「ああ、分からぬな」

普段であるなら逆で然るべきであるのに、ここに来て二人は反転した。

火から水に。水から火に。SからMに。

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