43: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:24:58.71 ID:UDVM4aPw0
「なんであれ、アタシの獲物の命を掻っ攫った以上、あの男には、自分の命でツケを払って貰わなきゃ気が済まねえのよ。だからアタシは雨男を探してた」
それはそれで凄い言い分ですね、と、わたしは思ったが、口には出さなかった。
「でも、雨男を殺すこともできないんですよね?」
「殺せなくても、殺しにかからなくちゃならなかったのよ。雨男の始末は報復であると同時に、アタシがアタシである為の試験みたいなもんだから」まあ、ダメだったけどね、とジェノサイダーは自嘲気味な笑みを浮かべた。「あの男、雨男にも言われたのよねえ。『殺る気あるのか』って」
雨男が、言葉を発していたのか。あの、地面に転がっているジェノサイダーを、雨男が覗き込んだ時だろうか。
「アタシは、殺人鬼として致命的なことに、人が殺せなくなっちまったのよ。アタシは殺人鬼である、ということこそが、切り離されたアタシの同一性だってのに、このままじゃどうにも、まずいのよね。雨男が終わらせてくれるかと思ったら、向こうも『殺る気』、なくしちゃったみたいだし」
はあ、とジェノサイダーは溜息を吐いた。
「どの道、アタシはこのままじゃ存在できなくなる。消えるしかねえのよ。綺麗さっぱりね」どうすっかねえ、と、ジェノサイダーは伸びをした。自身の存在が懸かった問題らしいが、その割にはどうでも良さそうな態度で、自転車の鍵をなくして、明日の登下校をどうしようか、と悩む学生のようだった。
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