103: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:28:27.65 ID:xRKE2vuiO
赤城は負けじとその眼差しを見つめ返した。
「少なくとも私にとっては、今訊かなければならないことです」
104: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:29:20.24 ID:xRKE2vuiO
しばし、刺すような静寂が執務室を覆った。
赤城は加賀の方を見る。
加賀は目を瞑って直立不動の姿勢を保っていた。
105: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:30:10.35 ID:xRKE2vuiO
「……なぜ『空母棲鬼』に狙われていたのが、自分だと思った? 聞けば交戦の直前、お前の様子がおかしかったとのことだが」
その問いには答えなかった。
106: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:31:23.21 ID:xRKE2vuiO
「だが、戯言の域を出んな」
「提督!」
107: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:32:47.17 ID:xRKE2vuiO
「百歩。百歩譲って、だ。かの空母棲鬼が、かつてどこかの海に沈んだ艦娘であったとして。過ぐる日我々の仲間であったのだと仮定して」
提督が細長く息を漏らす。
108: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:34:18.46 ID:xRKE2vuiO
返す言葉はなかった。
至極正論だった。
死者の正体を詮索することなど、こと戦争においてはなんの意味もない。
死者が決して戻ってこないことを、軍人ほど実感している者は他にいないからだ。
109: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:35:16.83 ID:xRKE2vuiO
「あなたの思い出の海に、指輪を受け取った『赤城』は棲んでいますか?」
110: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:36:11.63 ID:xRKE2vuiO
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
返答を得て、赤城は執務室を退去していった。
111: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:37:39.58 ID:xRKE2vuiO
煙草を一本ケースから抜き出す。
口に咥えたところで、隣に佇む秘書艦が自分の喫煙行為を好ましく思っていないことを思い出した。
彼女の前の秘書艦なら、自分の好きなように吸わせてくれた。
112: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:39:14.12 ID:xRKE2vuiO
「あなたは『赤城さん』も『赤城』も、等しく愛している。愛していた」
煙草の先端が仄赤く染まる。
113: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:40:55.92 ID:xRKE2vuiO
彼女に初めて出会ったのがどれほど昔のことになるのか、今となっては定かではない。
ただ、初めて出会った時のことは鮮明に思い出せた。
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