過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ
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894:名無しNIPPER[sage]
2014/12/30(火) 04:16:19.67 ID:ORPcUiA0o
>>852
「父親が使っていた机」

親父が死んだ。死因は癌だったそうだ。
息子の俺の目から見ても、ロクでもない親父だった。
若いころは有名な作家だったらしいが、末期の親父は執筆だとか言って部屋に籠りっきりで、母親にはずいぶん昔に逃げられた。
俺を置いて行った母も、相変わらず部屋に籠りっきりの父親も嫌いだった俺は、ようやく自由になれた程度の認識しかしていなかった。

遺品を整理する為にと、産まれて初めて親父の部屋に入った。
汚いんだろうなと思っていたら、中は机がひとつと、本棚、それと薄汚れたノートパソコンがあるだけだった。
結構几帳面だったんだななんて考えながら、机の引き出しをひとつずつ開けていく。
と、ひとつだけ、開かない引き出しがあった。鍵付きの引き出しだった。
目の届く範囲に鍵が無かったのに加え、それほど興味のなかった俺は、「開かないのならいいや」とすぐに忘れて他のものの整理へと移った。

親父の部屋にあったもので残ったものは、机だけだった。
本棚の本は全て古本屋へ持って行き、買い取ってもらえるものは買い取ってもらい、金額のつかないものは引き取ってもらった。
ノートパソコンは電源ボタンを押してもうんともすんとも言わず、パソコンに詳しくなかった俺はそのまま捨ててしまった。
机だけはどうしようもなく、暇な時に友達でも呼んで解体するのを手伝ってもらおうなどと考えていた。

ふと、鍵の掛かった引き出しへ視線が行く。
あの後部屋の整理を終えても鍵は出てこず、結局開けられずじまいだった。
中に何が入っているのか好奇心が湧いた俺は、力任せにその引き出しを開けてやろうと試みた。
結果は、勢い余ってロックをへし折り、中に入っていたものをぶちまけると言う有様となった。

自分に呆れながら、ぶちまけたものを拾い集める。
中に入っていたのは、便箋だった。数もさることながら、一枚一枚に膨大な文章まで書かれていた。



父親が死んだ今も、その便箋の全てにはまだ目を通しきれていなかった。
ただひとつわかることは、あの人は確かに俺の父親だったんだな、ということだけだ。


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