19: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/06(月) 23:35:23.15 ID:l+3sZe1fo
私が話し終えるとお姉さんはなんだかとても悲しそうな顔をした。
「そんなことが、あったんだね…手にはまってるそれは、枷ってことか」
そういうとお姉さんは腰の皮巻から小さなナイフを取り出した。
「腕、貸して。それ取ってあげるよ」
お姉さんに言われて、私はおずおずと両腕を差し出した。お姉さんは、ナイフを枷の鍵穴に突っ込むとくいっとひねった。
枷は思いのほか簡単に外れてくれた。
その下の腕は赤くすり切れてしまっていて、あちこちからうっすらと血が出ている。
痛みはそれほどでもなかったけど、でも、取れて腕が軽くなって、私はなんだか安心した気持ちになった。
そんなとき、妖精さんがパタパタっと私の背中の方から出てき、私の腕にチョコンと座った。
何をするのかと思ったら、妖精さんがいつもより少し明るく光って、なんだか枷のはまっていた場所がホンワカと温かくなってくる。
「回復魔法…?」
お姉さんがそう呟くように言った。
「妖精さん、そんなことできるの!?」
私の声に妖精さんはパタパタっと飛び上がって、空中でエッヘン、って感じで胸を張った。
私の腕にあった擦り傷はなくなって、すっかりきれいになっている。
「妖精さん、すごい!ありがとう!」
私は思わずそんな声を上げて妖精さんの小さな手を取ってお礼を言った。
「あはは、仲良しみたいだな」
「お姉さんも、ありがとう!」
「いいんだよ、別に。それより、もしできたらこのあたりの道案内頼めないかな?
流された荷物を取りに行かないと、またいつどこで行き倒れになるかわかったもんじゃない」
道案内、か…困ったな、私、この山のことよく知らないよ…
そう思って私は妖精さんを見た。妖精さんなら、もしかしたら知ってるかもしれない。夕方過ぎだったらトロールさんにお願いした方がいいんだろうけど
それじゃぁ、きっとお姉さんは困っちゃうしね…
私の視線に気が付いてくれた妖精さんは、お姉さんをチラッと見てから、すこし考えるみたいなしぐさを見せて、少ししてコクコク、とうなずいてくれた。
「よかった!お姉さん、妖精さんが案内してくれるって」
「そっか!助かるよ!じゃぁ、よろしく頼むな!」
お姉さんはそういって立ち上がろうとして、そのまま顔から地面に崩れ落ちた。
ドシャァっとすごい音がする。
「お、お、お姉さん!」
「いててて…まいったな…」
お姉さんがそううめきながら起き上る。その顔を見て、私はぷっと噴き出してしまった。
「腹が減っちゃってちょっとダメだ…ごめん、何か食べるものとかないかな…?少しでも口に入れば違うと思うんだけど…って、あれ、なに笑ってんの?」
お姉さんはボリボリと頭を掻きながら私を見てそう聞いてくる。
「う、うん…お、お魚と木の実でよかったら、一緒に食べよう!」
私は笑いをこらえながらお姉さんにそう言ってあげる。
お姉さんは、両方の鼻からドバドバ鼻血を垂らしながら、私を見て不思議そうに首をかしげていた。
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