43: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/13(月) 22:20:40.70 ID:Q2+gdezMo
私は真っ暗な洞穴の中に駆け出した。妖精さんはまだ、一生懸命私を引っ張っている。妖精さん、そんなことしてないで、先に飛んでってよ!足元が見えない!
そう思ったのも束の間、妖精さんは今度は私の顔に張り付いてきた。
「ちょ、ちょっと!妖精さん!離れてよ!トロールさんとお姉さんを止めなきゃ!」
私は、小さな体の妖精さんを傷つけないようにそっと捕まえて顔から引き離す。でも妖精さんは私の前髪を掴んで離れない。
「もう!なんで邪魔するの!トロールさんかお姉さんが怪我しちゃうかもしれないんだよ!」
私は妖精さんに怒鳴った。そしたら、聞いたことのない、澄んだ綺麗な声が私の耳に聞こえた。
「行っちゃダメ!トロールに言われた!あなたを隠してって!」
喋っていたのは、目の前にいる妖精さんだった。
「よ、妖精さん…こ、声が…!」
私が言ったら、妖精さんはハッとして自分の口に手を当てた。でも、すぐに険しい表情になって私に言った。
「木のところに走って!あの木の根元には大きなウロがある!そこに隠れて!」
「なんでよ!妖精さんはトロールさん達が心配じゃないの!?」
「心配だよ!でも、あの人たちは普通じゃない!あなたも何をされるかわからない!」
「あ、あの人たち…?」
「人間よ!人間たちが来たのよ!」
「人間?む、村の人?そ、それなら、やっぱり私が行くよ!私がトロールさんは良いトロールさんだっていえば、きっとわかってくれる!」
「違うわ!そんな人達じゃない…!私、聞いたの…四人組の中の一人の呼び名を…」
「呼び名…?」
「『勇者様』って、そう言ってた…トロールは今、勇者と戦ってるの…!」
勇者?勇者様…?あの、魔界の王様の魔王ってのをやっつけて、平和を取り戻したっていう、勇者様?
どうして?なんで?勇者様は、良い人でしょ?
平和のために戦ってくれたんでしょ?
どうしてトロールさんと戦ってるの?
トロールさんは、悪いことなんてしない。
人間なんて食べないし、私を傷つけたりもしなかった。
良いトロールさんなんだよ…?
それなのに、どうして勇者様はトロールさんと戦ってるって言うの!?
「どうして!?」
「勇者は、魔族の敵。魔族と見れば、容赦なく襲いかかってきて切り刻むの!」
「そんな…勇者様が…?」
「勇者ってのは人間の希望なのかもしれない…でもね、私たち魔族にとっては悪夢そのものなの!」
「だから戦うの!?違うよ!勇者様だってきっと分かってくれる!魔族にだって良い人たちがいるんだって、きっと分かってくれる!」
私は必死にそう叫んだ。だって、そんなのおかしいじゃない…!魔族だって、人間だって、生きてるんだよ!?
相手のことを考えて優しくしたり、反対に憎いって思ったりして当然じゃない!
それをただ魔族だからって傷つけるなんて、絶対におかしい!
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