44: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/13(月) 22:21:44.94 ID:Q2+gdezMo
「妖精さんは隠れてて!」
私は妖精さんの捕まえていた手をそっと離して真っ暗な洞穴を駆け抜けた。途中、何回か転んでしまった。
硬い地面に膝がぶつかって涙が出そうになる。きっと血も出ちゃってるだろう。でも、行かなきゃ、私…!
私を守ってくれたトロールさんを、今度は私が守ってあげなきゃ!
妖精さんが途中で追いついて来て、私の服を引っ張りながらダメだよ!って何度も怒鳴ってたけど、私は走った。
ついに、洞穴の先にうっすらとあかりが見えてきた。私は、膝が痛いのも忘れて、とにかく走った。
トロールさんの声が聞こえる。うなってる…雄叫びっていうのかもしれない。ゴロゴロと、まるで本当に雷みたいだ。
私は洞穴を抜けた。
そこには、大きな木の棒を持って振り回しているトロールさんと、ピカピカの鎧兜を身につけた人たちに黒装束の人もいた。
あれが、勇者様とその仲間なの…!?
「ぐうぅぅっ!」
不意に、トロールさんの苦しそうな声が響いた。見るとトロールさんは肩のあたりを抑えていた。真っ赤な血が、満月の明かりに照らされて光っている。
「やめて…!やめてください!」
私は声の限りに叫んだ。
一瞬、その場にいた全員の動きが止まる。
「オ前、逃ゲロ…」
トロールさんは、私を見るなり低い声でそう言った。
「大丈夫…話せばきっと分かってくれる!」
私はトロールさんにそう言ってトロールさんと戦っていた人達に向き直った。
「みなさんが、勇者様御一行ですか?」
「あぁ、そうだけど…?」
その中のひとり、ほかの三人よりも視線が鋭くて、ピカピカの鎧を着込んだ人が返事をしてくれる。
「このトロールさんは、良いトロールさんなんです!私を助けてくれたんです!だから、戦うのはやめてください!」
私が言うと、勇者様はほかの三人に目配せをして、ケタケタケタっと笑い出した。
「お嬢さん、バカ言っちゃいけない。トロールが良いやつだって?そんなことありえるはずがないだろ?」
勇者様のその言葉のあとに、黒装束の男の人が口を開いた。
「我々は、魔王を倒す目的で魔界に入りました。魔族というのは、どいつもこいつも底意地悪く下劣で卑劣なものばかりですよ」
すると今度は、大きな斧を担いだ男が話し出す。
「そうだなぁ、まったく、胸糞悪い。こいつらが人間界にいるってだけで、気分が悪くなってくる」
弓を持っていた最後の一人も薄気味悪く笑って言った。
「ひひひ。それに俺たちは麓の村の長からトロール退治を頼まれててね。前金もたんまり頂いてる。それになんでも、村の一人娘がさらわれたらしいんだ」
それを聞いた勇者様が声を上げて笑い出した。
「あはははは!まぁ、どこを見てもそんな娘見当たらないがな…残念だよ、トロールに玩弄されて命を落とすだなんて…」
そう言った勇者様の頭上に、トロールさんが持っていた大きな木の棒を振り下ろした。
ドカンと大きな音がして木の棒が地面にめり込む。勇者様はそれを間一髪で回避していた。
「てめぇ!このデク!俺がまだ喋ってる途中だろうが!」
勇者様はそう叫ぶとトロールさんの方に手をかざした。
次の瞬間、勇者様の手から火の玉が飛び出してトロールさんにぶつかり弾ける。
「うぐぅぅ!」
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