52: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/14(火) 21:27:11.10 ID:rEfyuFNso
「お、お姉、さん…?」
私は、気がつかないうちにそう口にしていた。
「騒がしいと思って急いで戻ってきたら、なんだよ、ずいぶんとひどい目に合わされてんじゃねえかよ」
お姉さんだ…私は、そのことに気がついた瞬間、ガクガクと膝が震えてくるのを感じてその場に座り込んでしまった。
張り詰めていた何かが切れちゃったみたいに、体から力が抜けて身動きできなくなる。
「なんだ、貴様は?」
「通りすがりだよ」
お姉さんはそう言うと、素早い動きで勇者の下腹を思いきり蹴飛ばした。
勇者の男は、それを読んでみたみたいに軽く後ろに飛び退いてその衝撃を逃がしたみたいだった。
その隙に、お姉さんがチラっと私たちをみやった。
「トロール、だいぶやられてるな…妖精ちゃん、できる限りの手当をしてやってくれ」
妖精さんがコクコクっと頷く。それから、お姉さんは私の頭をクシャクシャっとなでてくれた。
「よく頑張ったな。あとはあたしに任せておけ」
お姉さんはそう言って笑うと、勇者達の方へと向き直った。
とたんに、弓の男がヒューと口笛を吹いた。
「なかなかのべっぴんさんじゃないかよ。おい、殺すなよ、俺はこっちのほうが好みだ」
「クフフ、ならあちらのお嬢さんは私と勇者でシェア、ということでいいですかね」
「俺ぁ、こういう気の強い女は好かないからな」
「わかってないな、勇者。こう言うのを力任せに汚すのが楽しいんだろうよ?」
男たちがそう言葉を交わして下品な笑い声を漏らす。お姉さんはそれを聞いて、ピクっと何かに気がついたみたいな雰囲気になった。
「おい下衆ども。今勇者って言ったか?」
お姉さんの言葉に、勇者の男が声を上げて笑い出した。
「あははは!そうだ、この俺がかの魔王を倒し世界に平和をもたらした救世の勇者だ!」
「そのとおり。いっぱしの使い手ではあるようだが、魔王を討ったこの男に勝てる見込みは万に一つもないだろう」
黒装束の男が勇者の言葉に続いて笑う。
それを聞いたお姉さんは、ふぅ、っと大きくため息をついた。
「勇者、ね…なら、あたしを殺せるかもな」
「なんだと?どう言う意味だ?」
勇者の男は怪訝な顔をしてお姉さんに聞き返す。でも、お姉さんはそれを無視して左腕の袖を捲くった。
そっちは、確か、呪いが刻まれている方の腕じゃ…?
「あぁ?なんだ、その腕?呪文の類か?」
「呪いじゃないのか?うへぇ、やっぱ俺、その女要らねえわ」
「切り落とせばどうとでもなるだろう?」
そう言い合う男たちの言葉を聞いて、お姉さんはクスっと笑った。
それに気づいた男たちが、とたんに表情を険しくする。
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