過去ログ - 幼女とトロール
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57: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/14(火) 21:30:21.24 ID:rEfyuFNso

 「お姉さん…」

私は思わずお姉さんの名を呼んだ。お姉さんは悲しい笑顔のまま言った。

「ごめん。怖い思いをさせちゃったね…大丈夫、もうしないから。だから、もう少し一緒に居させて。トロールの具合いだけ見させてよ」

そ、そうだ!トロールさん!

 私は慌てて振り返って、トロールさんの様子を見た。

妖精さんが一生懸命に光って回復魔法を唱えているけど、トロールさんの傷は治っているようには見えない。

それどころか、さっきお姉さんの背中に生えていた翼が消える時と同じように、チリチリと体のあちこちから霧のようなものが立ち上っているのがわかる。

「妖精さん!」

「…いくらやっても、回復魔法が効かない…生命力を失い過ぎてる…!」

「そんな…!」

それってつまり、怪我がひどくって死んじゃいそうってことでしょ!?ど、どうしよう…トロールさん、トロールさんが!

「お、お姉さん!」

私は考えるよりも早くお姉さんに飛びついていた。

「お願い、お姉さん!トロールさんを助けてあげて!トロールさんは私と妖精さんを守るために戦ってくれただけなの!悪いことをしようとしたんじゃないの!」

トロールさんが死んじゃうかもしれない、って思ったらいっぱい涙が出てきてとまらなくなっていた。それでも私は、お姉さんにそうお願いした。

お姉さんは、悲しい表情のまま、でも、かすかに笑って、私の髪をクシャっとなでてくれた。

 お姉さんはそれから、トロールさんの頭の方に行くと、ゆっくりとその傍にしゃがみこんだ。

「おい、トロール。聞こえるか?」

「…ウグッ」

「聞こえてるんなら…もういい。もう頑張らなくていい…あいつら全部あたしが片付けた。だから、もう休め…」

お姉さんの言葉が、私に突き刺さった。そんな…トロールさん、ダメなの?た、助けて上げられないの!?

そう思い至った瞬間、胸の奥から痛い気持ちがブワっと湧き上がってきて、さっき以上に涙が溢れてくる。

 「ゲホッ、ガフッ…マ…魔王、様…ゴ、ゴメンナサイ…」

「トロール!」

トロールさんが、苦しそうにそう声を上げた。妖精さんが悲しそうな声を上げている。

「ん、どうした?」

それを聞いたお姉さんが、左手で優しくトロールさんの頬に触れた。

「オイ、逃ゲタ…戦ウ事、怖クテ、オイ、逃ゲタ…魔界モ、森ニ住ンデタ仲間モ、裏切ッタ。オイハ、ヒドイヤツ…」

「そんなことないさ…」

「魔王様、オイ、裏切ッタコト謝ル。逃ゲタ事モ謝ル。オイガ悪カッタ。オイハ、悪イトロールデイイ。ソノ代ワリ…子供ノ人間、守ッテ欲シイ…」

「お前…」

「オイハ…オイハ…」

「わかった…もうしゃべるな…」

お姉さんはそう言うと、トロールさんの頬に当てていた手のひらをおでこのあたりに移動させた。

「魔王の名において誓おう。お前の頼み、確かに聞き届けた」

そう言ったお姉さんの手のひらがポッと明るく輝きだした。

「だから、もう休め…」

そう言ったお姉さんの目から、ポタリと一筋の涙がこぼれた。



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