872: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:30:40.67 ID:g/PD0yL+o
「まぁまぁ、十六姉ちゃん、そうカッカするなって」
「だけどさ!」
「勇者様には勇者様の考えがあって俺達の手助けをしてくれたワケだろ?感謝こそすれ、怒るのは違うと思うぜ?
特に、まんまと策にハマった俺達は、どっちかって言うと勇者様と一緒に十三姉ちゃんに謝らなきゃいけない立場なんだし」
十七号くんが肩をすくめてそう言ってみせる。すると十六号さんは、ぐうっと歯噛みして、それ以上何も言えなくなってしまった。
そう、それは本当に、十七号くんの言う通り、だ。
「ねぇ、十七号くん」
不意に私の傍らにいた零号ちゃんがそう声を上げた。十七号くんはどうした、と言う代わりに、零号ちゃんの顔を見据える。
そんな零号ちゃんの口から、不安げな言葉が漏れた。
「お姉ちゃん、勇者様にひどいことをするつもりかな…?」
相変わらず私のマントを握っていた零号ちゃんの手が小刻みに震えている。それだけ、不安なんだろう…
でもきっと、十七号くんは零号ちゃんに「そんなことない」、って言ってくれる。私はそう信じて十七号くん顔を見つめた。
十七号くんは、零号ちゃん私の思いに応える前に、チラッと街の方を見やると、おもむろにふぅ、ため息を吐いた。表情は、複雑そうだ。
「石頭なのは相変わらずだからなぁ“議長様”は…」
そんな皮肉っぽいことを言った十七号くんは、そのまま私達に街の方を顎でしゃくってみせる。
ハッとして街の方に目をやると、三の壁の門かから無数の騎馬隊がこちらに向かって来ている姿が目に入る。
あれは…親衛隊第二班と、班長さんが束ねる第三班の人達のようだ。
「どうやら姉ちゃんはご機嫌ナナメらしいな。最上級警備で当たるみたいだ」
そう…あの騎馬隊はお姉さんの指示で私達を警備しに来たんだね…私達を守るためじゃなく、勇者様がおかしなことをしないように…
私はそのことに気が付いて思わずそばにあった零号ちゃんの手をギュッと握ってしまっていた。
これがきっと、お姉さんの気持ちの現れなんだ、って、暗に感じ取れてしまったから…。
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