873: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:31:30.51 ID:g/PD0yL+o
私達は親衛隊の騎馬隊三十騎に警護されてようやく中央都市へたどり着いた。
一年前に零号ちゃんが隊長さんと巡検出発する頃にはまだ計画中だった三の壁がもうほとんど出来上がっていて、そのことだけには零号ちゃんは驚いている様子だった。
街では沢山の人から
「おぉ、随分と早かったじゃねえ、従徒のお城ちゃん方!」
「あら、おかえりなさい!長旅ご苦労様だね!」
なんて労りの言葉を掛けてもらったけど、それをちゃんと聞けるほど気持ちに余裕がなくて、作り笑いしか出来なかった。
お姉さん、まさか勇者様を殺すだなんて言わないよね?そうでなくても幽閉するとかって言い出したらどうしよう…?
私は今まで頭の隅に追いやっていたはずの心配や不安が頭の中で暴れまわっているのを感じて、ぎゅうぎゅうと胸を締め付けられる。
そうしている間に私達は元魔王城の建物だった、今は議会本部と呼ばれている私達が生活したり、住民の代表と議長のお姉さんが話し合う議事堂なんかが入っている建物に到着してしまった。
班長さんによって黒い袋を頭から被せられた勇者様の前後左右には親衛隊の隊員さん達が張り付き、勇者様に巻かれている縄を手にぎゅっと握っている。
私達は先頭に立ち、お姉さんの居る議長室へを重くなった足をすすめる。
階段を2つあがって出た廊下を右にまっすぐ進み、元はあの暖炉の部屋だった議長室へ着いてしまう。
「議長様。要人をお連れ致しました」
扉の前で班長さんがそう報告すると、そお向こうから
「入れ」
と言うくぐもった声が聞こえてきた。
ここまで来たら、もうどうしようもない。私は零号ちゃんと妖精ちゃんと目を合わせて覚悟を決め、
最後に十七号くんを見て勇気をもらってから、目の前の扉押し開けた。
中には色彩豊かなじゅうたんが敷かれ、その向うには書類が山積した大きな執務机があり、そこに、明らかに不機嫌そうな顔をしたお姉さんが座っていた。
その傍らには、同じく引き締まった表情をした兵長さんがいる。
でも、おかしいな…サキュバスさんや魔道士さんはどうしたんだろう…?
国王軍を抜け、今はここで要職に就いているはずの弓師さんの姿もない。
「そこに」
そんなことを気にしている間にお姉さんが部屋の真ん中顎でしゃくるので、親衛隊員さん達が勇者様を部屋の中央に座らせた。
「班長級以外の者は下って通常任務に復帰してくれ」
「はっ!」
兵長さんの引き締まった声が響いて、隊員さん達は返事をすると足早に部屋から出ていき、大きな扉が閉められた。
部屋には私と零号ちゃん、妖精さん、十六号さんに大尉さん。それに班長さんと十七号くんに一班の班長を務める鳥の剣士さんと二班の班長さん。
そして、兵長さんとお姉さんに勇者様だけだ。
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