過去ログ - 幼女とトロール
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874: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:31:59.09 ID:g/PD0yL+o

 一瞬、胸が詰まるような緊張感が漂う。そんな中で口を開いたのは、誰でもない、お姉さんだった。

「よう、久しぶりだな」

ギシっとお姉さんがイスから立ち上がり、敵愾心まる出しの視線で勇者様を見据えながら言った。

「あぁ…その、うん…」

勇者様は、顔を引きつらせてそう応える。そんな勇者様の元に歩み寄ったお姉さんは、勇者様のすぐ前に立って肩を怒らせながら勇者様を見下ろして言う。

「随分と血色がいいじゃないかよ、えぇ?どこをふらついてると思ったら、まさか観光地で大工とはな」

「あぁ…やっぱり生きてたってのは、バレてた?」

「まぁな。あんたの死体が出なかったから、何かやったと思ってはいた…いや、正確に言うなら、幼女の予想だったけど」

お姉さんはそう言って、私をチラッと見やった。そんなお姉さんの意思を受けて、私が当時考えたことを勇者様に説明する。

「うん…最初は基礎構文と一緒に消滅しちゃったのかと思ったけど…でも、良く考えたらあのとき勇者様は基礎構文を消したんじゃなくて取り込んでた。

 だから、勇者様は死んだんじゃなくて、身体に宿した基礎構文を使ってどこかに転移魔法か何かで移動したんじゃないかって考える方が自然かなって」

すると、勇者様はがっくりと肩を落として

「…あなたは本当に頭がいいよね…」

なんて呟いた。

 「で?」

と、お姉さんが口を開いて、勇者様の注意を自分に引き戻す。そしてお姉さんは、端的に勇者様に問いただした。

「基礎構文はどうした?」

そう、勇者様が私の予想通り生きていたのなら、もう一つの仮定である「基礎構文は勇者様が取り込んだ」というのもおそらくは正しい。

それを気にしない、と言う方がどうかしている。もし基礎構文がまだどこかに存在しているのなら、私達にはそれに抗う術がない。

「あたしの責任で転移した大陸の果てでちゃんと消滅させたよ」

勇者様は、お姉さんのその問に顔を上げ、お姉さんの目をジッと見て応える。

「…嘘は言ってないな?」

お姉さんはそれでも疑いの眼差しを向けてもう一度聞く。でお、勇者様は表情を一切変えずに

「誓って、本当だ」

とお姉さんと同じく、端的に、そして確信を持って答えた。

 それを聞いたお姉さんは、ひとまずふうとため息を吐くと、すとん、と肩を落とした。

 その様子を見て、私はホッと胸を撫で下ろす。どうやらお姉さん、勇者様をどうかしようだなんて思ってはいないみたい。

これで、あとはうまく仲直りが出来れば言うことないんだけど…

 なんて、思っていた私はまだ状況が理解できていなかった。

お姉さんは今度は、ふんぞり返って腰に手を当てると、色のない視線で勇者様を見下ろしながら言った。

「…よし、それならその首刎ねたら殺せるな?おい、誰か剣を貸せ」

「なっ……!?」

思わぬ言葉に、誰よりもまず勇者様がそう息を飲んだ。
 


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