886: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:40:52.41 ID:g/PD0yL+o
兵長さんは顔をあげて頷き、大尉さんも両頬をパシンと叩いて気持ちを切り替える。
「あいつ、今度は鉄の足枷付けてやる…!」
十六号さんは相変わらずだけど、探してはくれそうだ。
「私、妖精ちゃんにも声かけてくる!」
零号ちゃんは言うが早いか部屋を飛び出して行った。声を掛ける、か…そう言えば…
私はふと、そのことが気になって兵長さんの顔を見やる。すると、兵長さん私をジッと見つめていた。
「議長様は、休まれているか?」
「はい…たぶん、少し寝入ってくれてると思います」
私が答えると、兵長さんはふん、と鼻で息を吐き
「ひとまず、お知らせは避けておこう…もしものときは私が責を負う」
と、何かを覚悟した様子で言った。責、と言っても、お姉さんからくどくど説教をされるくらいだろうけど…
まぁでも、とにかく、お姉さんには寝ていてもらいたいから、なるべくは私達だけで解決したい。
「あたし、街へ降りて残りの防衛隊と連携して、門に検問を張って来るよ」
「アタシも表を見て回る。親衛隊の連中を出しても良いよな?」
「ええ、班長には私からの命だと告げてください。私はここで集まってきた情報を分析してみます」
大尉さん、十六号さん、兵長さんがそれぞれ役割を確認する。
みんなは外を中心に探すんだね…だったら私は…
「私は、ここの中をもう一度探してみるよ。零号ちゃんと妖精さんと一緒に!」
そ私が言って、おおよそお体制が決まった。
私の言葉を聞いた兵長さんは一人一人に頷いて返し、それから号令を発した。
「各員、無理はするなで。発見を第一に、発見したら警笛を吹いて掩護を待つように!」
「「おう!」
私達は兵長さんの号令を聞き、そう声をあげて足早に部屋を後にした。
大尉さん達はすぐに階下へと階段を駆け下りて行く。
それを見送ることもしないで、私は勇者様がいた部屋へと駆け出していた。
もしかしたら、手紙の一通でも残っているかも知れない、ってそう思ったからだった。
廊下を駆け抜け、階段を一つ下って勇者様が囚われていた部屋へとたどり着く。
そこではすでに、中尉さんとその部下の人による検分が始まっていた。
「中尉さん、何か出た?」
「いや、何も…今のところは…」
「勇者様が脱走した窓ってどこかな?」
「あぁ、そっちの西の窓だ」
私はそれを聞いて、お礼もそこそこにその窓辺に駆け寄ると、開け放たれている窓の外を見やった。
確かに窓枠にシーツとカーテンしつらえたと見える縄が、地面の方へと伸びている。布で作られた縄は当然下の地面まで伸びている。
縄は、ベッドの足に括りつけられていた。私はそのベッドの足の部分を確かめる。
ギュッと結んであったその縄の結び目を、私は自分の手でグイッと引っ張ってみた。
ほんかすかだけど、縄がギュッとしまって、さらにベッドの足へとキツく結ばれる。
それを確かめた私は、身を翻して再び窓辺に戻ると、そこから身を乗り出して当たりを確かめる。
下には、商人さん達なんかが右往左往しながら仕事をしている。
もし下に降りようとしたんなら、あの人達の誰かが目撃している可能性が高い…
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