893: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:46:24.83 ID:g/PD0yL+o
「それ、あげるよ」
「えぇ!?で、でも、大事な物なんじゃ…!?」
「大事だった…でも、もう良いんだ。あたし、ちゃんと未来を生きなきゃいけない。罪滅ぼしのためかなんのためか分からないけど…
とにかく、これからあたしがやっていく事は、それを持ったままじゃちゃいけない気がするんだ。
過去を認めて、受け入れるために…幻みたいな奇跡に頼るのは、もうやめたよ」
そう言った勇者様は、よっ、なんて掛け声共に立ち上がった。
「あたしは、魔法がなくてもあたしに出来ることであの子に認められなきゃ行けないんだ。
それに、あたしは元々戦士じゃなくて学者の出だしね、持ってたってそんなかすかな力をうまく使う自信がない。
あなたが要らなきゃ、あの子にでも預けておくといいよ」
勇者様はそう言って、眩しいくらいの笑顔を見せてくれる。なんだろう…どこか、吹っ切れたような、そんな力強さを感じる。
「…じゃぁ、ありがたく受け取ります。きっと大事にします」
私は、勇者様に頭を下げて丁寧にお礼を言う。
すると勇者様は、
「うん。ああ、それだけど、使いすぎると石が削れて最後にはなくなっちゃうから、もし使うんなら注意してね」
なんて言って、私が上がってきた階段のある木の戸に向けて歩きだした。
私はハッとして立ち上がり、勇者様の後を追う。
「勇者様!どこ行くの!?」
「あはは、大丈夫。もう逃げないよ」
私の言葉に、勇者様はそう笑い声をあげて答える。それから、ニコっと優しい笑みで、私に言ってくれた。
「出来そうなことに心当たりがあってさ。
時代を超えて来ちゃったあたしに、この大陸のために出来ることなんて、正直ほとんどありはしないだろうけどな…
まぁ、幸い、どんなに時間が経ってもさほど変わらないようなこともあるもんだ」
「…?」
言葉の意味が分からずに戸惑ってしまった私の頭を、勇者様がポンポンと撫でてくれる。
そうしながら私達は揃って屋上を後にした。
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