9: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/06(月) 01:55:03.57 ID:l+3sZe1fo
どさ、っと、私はすっかり暗くなった地面へとおろされた。
腰をぶつけて、ちょっと痛い。
「ココ、入レ」
トロールさんがゴロゴロ声で私に言った。見るとそこには大きな洞穴があった。
「こ、ここは…?」
「ココ、オイノ家。オ前、ココデ待テ。オイ、食イ物取ッテクル」
トロールさんはそう言って私の胴体よりも太い指先で、私の体をグイグイと洞穴の方へと押しやる。
本当に悪い人じゃなさそうだけど…や、やっぱりちょっと怖いな…
そう思って、私は仕方なく、トロールさんの言う通りの洞穴の中を覗き込んだ。もう夜も遅いし、当然中は真っ暗で、何にも見えない。
うぅ…この中に入る、っていうのも、怖いな…
そう思って私が戸惑っていると、真っ暗な洞穴の中にいきなり何か光るものがポワッと浮かんだ。
お、おかしいな…ひ、光ってる…?幻とかじゃない…よね?
私はそう思って自分の目をこすってみる。でも、確かに何かが光っていて、それはフワフワと浮いているように動きながらこっちへ近づいてきている。
私は、その光に目を凝らしてみて、少しだけ驚いた。
その光の正体は、小さな人間みたいな生き物だった。羽が生えていて、フワフワ、ピカピカと光っている。
こ、これって…妖精、さん…?
羽の生えたその小さな人間…女の子は、私の顔を見て、パクパクと口を動かした。
な、なにか言ってるみたい…でも、聞こえない。な、なんだろう…?
「ソノ妖精、喋レナイ。デモ、イイヤツ」
トロールさんがまた、ゴロゴロっと言う。
「しゃ、喋れないの?」
「ソウ。怖イ思イシテ、喋レナクナッタ…人間ニ、イタズラサレタ」
「に、人間に?」
「ソウ。デモ、大丈夫。イイヤツ」
「喋れないのに、わかるの?」
「オイハ、自然ノ言葉ワカル。妖精モ、オナジ。声ガ出ナクテモ、話セル」
トロールさんはそういって、私をまた指の先でグイッと洞穴の中に押し込んだ。
同時に、妖精さんが私の服の裾をクイクイと引っ張ってくる。
「案内シテモラエ」
「あ、えっと…は、はい」
トロールさんは私の言葉を聞くと、そのままのっそりと背を向けて、森の奥の方へとズシン、ズシンと歩いて行ってしまった。
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