902: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/30(月) 01:03:20.07 ID:j0JuHi67o
そんなとき、不意にノックをする音がして、返事も待たずにドアがキィっと開いた。
部屋にやってきたのは、さっきお姉さんを連れて行ったばかりの十六号さんだった。
十六号さんは積み木で遊んでいる二人を見やるとクスっと笑い、それからすぐに私達の座っていたソファーへとやってきて、どっかりと腰を下ろした。
同時に
「ふぃー」
なんて情けない吐息を漏らす。
「十六号お姉ちゃんもお疲れ様」
「あぁ、うん。ありがと、零号」
零号ちゃんの労いに、十六号さんはいつものように零号ちゃんのモフモフの髪をクシャクシャと撫で付ける。
「会議は良いの?」
私がお聞くと、十六号さんはあぁーなんて間延びした相槌を打ってから
「班長さんが、細々したことは十七号にやらせるから、『筆頭様』はしばしご休憩を、だってさ」
なんて憎々しげな表情で言う。
「そう言えば会議、って、例の盗賊団についてだよね?」
零号ちゃんの質問に、十六号さんは
「あぁ、うん」
なんて項垂れつつ、それでも話して聞かせてくれる。
「なんでも、棄て民って連中の集まりが東部城塞からの隊商を襲ったんだってさ」
「棄て民?」
聞いたことのない言葉だったので、私はそう聞き返す。
「うん、土の民の町や集落にはいろいろ掟があって、それを破って追い出されたようなやつや、
そういう掟が嫌で自分からそういうとこでの生活を棄てた連中のことを言うんだってさ。東大陸で言えば、流浪人とかって言うやつ」
流浪人なら、知っている。定住する場所を持たず、宿から宿へ、日雇いの仕事を繰り返しながら生活をしている人のことだ。
どうやら西大陸にも同じような人がいるらしい。
「棄て民ってのは、ほとんどの場合は特別な技能を生かして、普通じゃできない仕事を受けて生活を立ててるらしいんだ。
例えば、村人が迷惑がってる獣を弓術で狩猟したりとか、行商やってる連中も多いって話だけど、
今回の盗賊団ってのは、どうも魔力を失って食い扶持に困った連中が寄り合い作って大きな街で盗みを繰り返してるみたいでね。
先週は東部城塞にもそれらしい連中が出没してる、って話だったらしいんだけど、
昨日、街道の隊商が狙われた、っていうんなら、次はこの街にも姿を現すかもしれない。
今は防衛隊半分出張ってて警備に穴が空きやすいから、その対策を話し合うんだとさ」
十六号さんはそんな事を言って、ソファーにドカッと身を横たえる。それから
「二刻したら起こしてくれ…アタシも姉ちゃん頼まれた書類の整理であんまり寝れてなくってさ」
と欠伸混じりに言うなりすぐに目をつむってしまった。
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