904: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/30(月) 01:04:23.95 ID:j0JuHi67o
その日の夕方、妖精さんが交代に来てくれて、私はお姉さんと姫ちゃんの部屋を後にした。
盗賊団対策の会議はまだ続いているようで、部屋にはお姉さんは戻って来ておらず、勇者様が姫ちゃんの面倒を見ている。
私の生活のために与えられている零号ちゃんと十六号さんとの相部屋にと向かう廊下を歩いていると、向こうの角から賑やかな声がして班長さん達が顔を出した。
「あぁ、これは従徒様」
班長さんがそう私に声を掛けてくれる。
「お疲れ様です、班長さん、皆さんも」
私は頭を下げてそう労ってから
「会議は終わりですか?」
と聞いてみる。
「ええ、ようやく、ですね。人員が停戦監視団で極端に減っているので、我々親衛隊も明日からは防衛隊と共同で市中の見まわりに当たる予定です」
そう言った班長さんは思い出したように、
「ただ、精鋭はここの警備に残しますから、御身の警護は抜かりありません」
と言い添えた。
正直、本部の中にいるだけなら警護なんて必要ないんじゃないか、って思うけど、それでも私は
「お気遣い、ありがとうございます」
とお礼を伝えた。
そんな話をしていたら、ふと角の向こうから別の足音が聞こえてひょっこりとお姉さんが顔を出した。
「よぉ、お疲れ様。見張りありがとうな」
お姉さんは私の顔を見るなりそう言って疲労の隠せていない表情にやおら笑顔を浮かべる。
「お姉さんもお疲れ様。姫ちゃん、今は寝ている最中だから大丈夫だよ」
私が部屋を出る前の様子を伝えてあげたら、お姉さんは苦笑いを浮かべて
「まぁ悔しいけど、言ってた通りあいつは子守には慣れてるみたいだしな」
なんて口にした。
慣れてる…って、どういうことだろう?勇者様、そんな話は全然してなかったけど…
「それ、勇者様が言ってたの?」
「そうだよ。あいつ、ちょうど今の幼女や零号くらいの頃に生まれたばかりの妹の世話を良くしてたんだって。聞いてないのか?」
「ううん、全然…」
私は、思わぬ話に驚きを隠せなかった。お姉さんと勇者様がそんな話をしていただなんて…
ううん、そんな話を出来るような間柄だったなんて、思っても見なかったからだ。
それに…もしかして、勇者様の妹って…
私がいつだったかの勇者様の話を思い出しかけとき、それに気付いたらしいお姉さんが複雑そうな表情で言った。
「そ。あたしの大昔の先祖って人のことらしい」
やっぱり…それじゃぁ勇者様はそのとき面倒を見た妹の、遠い子孫の娘の面倒を見ている、ってことなんだね…
それって、どんな気持ちなんだろう…?
私はなんだか純粋にそんなことを疑問に思ってしまっていた。いや、でも、待って…そんなことより…
978Res/1629.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。