921: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 00:33:31.23 ID:jGgpJsLto
「勇者様、大丈夫…?」
「………」
「ゆ、勇者様…!?」
「へっ?!あっ…」
勇者様がそんな声を漏らして、意識を覚醒させた。傍らで零号ちゃんが心配そうにその顔を覗き込んでいる。
「ごめん、ありがと…今あたし寝てたね…」
「まんま!まんまぁ!」
「はいはい、今日は姫ちゃんご機嫌だねぇ」
零号ちゃんにお礼を言った勇者様は姫ちゃんにそうねだられて、黄色い声をあげながら姫ちゃんの口に離乳食の乗ったスプーンを差し出す。
パクっとそれに食いついた姫ちゃんは、パチパチと手を叩きながら
「まんま!きた!」
と何やら喜んだ。それを見た勇者様と零号ちゃんがすかさず
「んん!まんま出来たね!」
「姫ちゃんすごいねぇ!」
なんておだて始める。
そんな二人の表情には、隠しきれない疲れが滲んでいた。
私がお姉さんの怒りの原因に気が付いてから三日。
勇者様は未だ、私が行き着いた答えに辿り着いている様子はない。
と言うより、そんなことを考える余裕がない、と言った方が正しいのかもしれない。
それと言うのも、まず、勇者様は、毎晩遅くに三刻だけ眠りに部屋に戻ってくるだけ。
それからここ数日の姫ちゃんは、すこぶる調子が悪かった。
それこそ今の姫ちゃんからは想像もつかないくらいで、眠ったと思って勇者様がベッドに戻せば大泣きし、離乳食はイヤイヤ。
流石に食べない回数が増えると栄養のことが心配になって、勇者様がお姉さんにそのことを伝えると、
普段は夜寝る前と夜中起きたときだけだった授乳の時間を昼間にも一度設けられることにはなった。
でも、お姉さんは忙しい身で時間が空かない。
それならば、と勇者様が会議室に衝立とタオルを持ち込んで、会議中だろうと授乳を決行。
その授乳の時間だけはお姉さんが見てくれるけれど、それ以外の殆どは勇者様が面倒をみるような日々が続いた。
夜泣きすれば、先ずは勇者様が抱き上げてあやし、おむつなんかを確認して、
それでもダメなら横になって仮眠を取るお姉さんを優しく抱き起こして、お姉さんごと姫ちゃんを抱くようにして授乳させてご機嫌を伺う。
お姉さんは半分眠ったままの授乳が終わったらパタリとベッドで二度寝に入る。
授乳させて貰って安心するのか、姫ちゃんはそこから元気いっぱいでしばらく寝ない。
それでも明け方ようやく寝付いたと思えば、三刻もしないうちに目を覚ましてギャンギャン泣く。
オムツを変えて離乳食の時間なんだけど、またヤダヤダで食べない。
二刻掛かってようやく半分、ってくらい頑張って、それでもお腹が膨れるのか姫ちゃんは寝入るけども、
お昼過ぎにはまた目を覚ましてギャンギャン泣く。
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