923: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 00:35:13.54 ID:jGgpJsLto
それから離乳食を食べ終えた姫ちゃんは、しばらく勇者様と遊んでいるうちにウトウトとし始め、
勇者様に抱かれると昨日までがまる嘘だったかのようにぐっすりと寝入ってくれた。
勇者様がベッドに降ろしても、泣き出すこともなく穏やかに寝息を立てている。それを確かめた勇者様は、ふぅ、と一つため息を吐いた。
勇者様が寝ていないのは間近で見ている私達が一番良く分かってる。
それに、たぶん、真夜中にならないと帰って来ないお姉さんもきっとほとんど眠れていない。
まとまって三刻寝ている分勇者様よりは良いのかも知れないけど、眠っている時間以外は書類の整理や会計、会議に面会と息付く暇もなさそうだ。
ここのところは二人も言い合いをする気力がないのか、会話と言えば姫ちゃんに関する必要な話をするくらい。
ケンカにならないのは良いことだとは思うんだけど…でも、今の状態が良いかと聞かれたら、けっして良いと答えられるようなことでもなかった。
「よし…じゃぁ、あたしも少し休ませてもらうよ」
勇者様が姫ちゃんの様子を確かめて、静かな声色で私達に言い、お姉さんが使っているベッドにストンと腰を降ろした。
「うん、そうして」
「ちょっと泣いたくらいなら、寝たままでいいからね。ね?」
私と零号ちゃんが口々にそう言うと、勇者様は少しだけ嬉しそうな顔をして
「ありがと。まぁ、とりあえずおやすみ…」
とベッドにグタリと横たわった。
それからほとんど間もなく、スースーと勇者様の寝息も聞こえてくる。
それを見届けて、私と零号ちゃんは顔を見合わせて胸を撫で下ろした。
私も零号ちゃんも今は休んでいる妖精さんも、今の状態になってからは勉強や仕事なんてしている暇もなくて、
あれこれと勇者様のお手伝いに駆け回っている。
夜泣きが始まったら私達も起きて、必要そうな物を勇者様に聞いてお城の台所や倉庫に取りに行ったりもしていた。
「赤ちゃんを育てるって、大変なんだね…」
ポツリと零号ちゃんが口にする。それから
「私、大きくなってもお母さんやれる自身ないなぁ…」
と大きくため息も吐いた。なんだかその話が可笑しくって、私は思わず笑ってしまう。
「まだまだずっと先のことじゃない?」
私がそう言ったら、零号ちゃんは渋い顔を見せて
「そうだけどさ…ね、私が赤ちゃん産むときは、幼女ちゃんも一緒に産もうよ。二人で交代してやれば楽かも」
なんて提案してくる。それは良い考えだけど…でも、私は首を傾げてしまう。
「それは良いと思うんだけど…そもそも赤ちゃんってどうやって出来るの…?」
そう言えば、この話は金獅子さんが帰って来てくれたら教えてくれるって言ってたっけ。
「え、結婚したら産まれるものじゃないの?」
「結婚しただけで、自然にお母さんのお腹が身ごもるのかな…」
「…そう言われると、なんだか違う気がする…」
「ね…きっと何かが必要なんだよ」
私達はそう言い合って、揃って首を傾げる。
でも、いくら考えたって知らないことは分からないから、金獅子さんが帰って来るのを待つ他にない。
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